第61話今後の予定
アルベロはちょっと残念そうに前を歩いている。おじさんの店で加工はできそうだけど、肝心のアダマンタイトがないとは想像していなかった。
僕としては別にミストマウンテンに行くのもやぶさかではない。でも宵の月亭の部屋を更新したばかりだしね。
「アルベロはどうしたいのー?」
「私一人のためにみんなをミストマウンテンに連れて行くのはちょっとね」
「別にいいのにー。ねぇ、ニール」
「うん。アルベロの弓は最大戦力だからね。パーティ的にも優先していいと思うけど」
「うーん」
「宵の月亭の部屋を更新したばかりだし、しばらくは王都で活動して、近いうちにミストマウンテンに行こうよ」
「いい?」
「もちろん」
それまでの間、壊れる矢代についてはパーティ資金でまかなうことに決まった。うちのパーティは今、小金持ちだからね。
ということで、今日は肩ならし程度に湖へジャイアントトード狩りに向かうことにした。この時間だし、さすがに追ってくる冒険者もいないだろう。
今から向かうと午後到着になるのであまり長くはいられない。それでも、僕の場合どのぐらいステータスアップによって自分の動きが変わっているか確認する必要がある。
あと、ジャイアントトード狩りでの短弓ハジャーダの使用は禁止することにした。売り物になる肉を爆発させちゃうからね。
ということで、ジャイアントトードはルイーズが引っ張ってきて、僕とアルベロで討伐し解体していくことになった。
ちなみに、ルイーズのショートソードは今アルベロが持っている。ドワーフのおじさんのとこで売ろうと思ったんだけど、ジャイアントトードの追加報酬を考えたときに爆散させてしまうのはもったいないのでアルベロが使うことになったのだ。
「アルベロはショートソードも扱えるの?」
「エルフ族は弓とレイピアが専門なの。だから小さな頃からこういう武器は練習はしていたわ」
ドワーフのようにパワーがある種族ではないので、スピードやしなやかさが売りのエルフ族は弓や刺突系武器の扱いが多いらしい。
「最初は僕が倒していい?」
「ええ、自分の動きを確認したいんでしょ。私は補助に徹するわ。スピード解体している時は私が前に出ればいいわね?」
「うん。そんな感じで」
何となくラウラの森を歩いているだけでもいつもより周りが見えている気がする。自分の動きに余裕があるからなのか、木の枝を踏んで音を立てることもないし、次に足を踏む場所を想定しながら森を歩けている。
「来たね」
周りが見えてくると森の動きを知ることができる。木々や葉の動きやそれらが揺れる音、そして何者かがこちらに近づいてきている。
「二体ね。いけそう?」
「うん、やってみる」
それからすぐに現れたルイーズからのハンドサインは二体。
ルイーズと入れ替わるようにして短槍を持って前へ出る。大盾はインベントリにしまってある。
ゲコゲーコ、ゲコゲーコとルイーズに小石をぶつけられて怒り心頭のジャイアントトード。
ジャンプ一番、広場に飛んできたところを突き刺す。まずは一体。
続いて現れたもう一体は、僕を敵だと認識したようですぐに攻撃態勢に入る。
あの態勢は舌攻撃だ。長い舌を飛ばすようにして僕の足をすくおうと狙ってくるけど、わかりやすい攻撃なので簡単に避けられる。
逆に舌を出しきって、動きが固まったところを正面から短槍を突き刺す。
「お見事ね」
「やっるー、ニール」
戦闘を二人から褒められるのは、はじめてのことかもしれない。
でも、それぐらいスムーズに倒せた気がする。ジャイアントトードのランクはD。つまり、Dランクになった僕なら十分討伐可能な魔物ということになる。
あの時は遠くみえていたルイーズのランクDに名実ともになれた気がしてちょっとした達成感を感じる。
「まだいくよね?」
「もちろん」
僕はルイーズにお願いをして、インベントリを使ってスピード解体をする。
「私はルリカラちゃんとしばらく休憩かなー」
「ピュイ」
この感じならルイーズが二体以上を引き連れて来ない限りアルベロの出番はないだろう。ということで、バブルラグーンで買ってきた魚の干物を炙ったものでルリカラは餌付けされていた。
あまり運動をしてないようだけど、太って空を飛べなくなってしまうようなことにはならないだろうか。
「ピュイ、ピュイ!」
おっと、心の声を拾われてしまった。「ドラゴンの幼生体はいっぱい食べて寝ることが仕事なの!」とのこと。若干プンプンである。僕もあとで餌付けをしよう。
でも今はジャイアントトードの討伐に集中する。自分の想定している以上に体を動かせることがすごく気持ちいい。
「また、二体ね」
「うん、任せて」
その後、ルイーズが釣ってきたジャイアントトードを十六体倒して帰宅することとなった。全部僕が倒しているし、解体もしている。
何というか、心地よい汗をかきながらもまだまだ動ける感じ。短時間で集中して動けた。これもルイーズのおかげだろう。
疾風のレイピアをもったルイーズはさらに洗練された無駄のない動きをみせている。
僕が成長した分、更に先に進んでしまった感じがするけど焦る必要はない。一緒に少しずつ成長していけばいいのだから。
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