第106話ケルベロスガチャ

「ケルベロスガチャ!?」


 アルベロとルイーズがその言葉に驚くが、一番驚いていたのはルリカラだった。


 まさかの二連続進化という超絶怒涛のステップアップ展開を目の当たりにしてルリカラは目を回して後ろに倒れてしまったのだ。


「だ、大丈夫。ルリカラちゃん」


「キュイー! キュイー!」


 頭が、頭が三つになってるんだよ! と話しているものの、その気持ちは残念ながらルイーズには伝わってはいない。


 いまだかつてない禍々しいまでの迫力を披露するガチャ。ゴツい首輪をした頭が三つに分かれたケルベロス。


「頭が三つ。ケルベロスガチャに更に進化したんだ」


 二回目の進化。これは金貨ガチャ相当の超レア発展ガチャと言ってもいいはず……だよね?


「そ、それで、結果は?」


「ちょっと待って、今、回してるから」


 ケルベロスは僕がガチャを回すたびに威嚇するように睨みを効かせてくる。噛みついてきたりはしないよね?


 びくびくしながらも、一回、二回と回して三回目にカプセルが、ガタンっと落ちてきた。色は期待していい虹色のカプセルだ。


 僕は震える手でカプセルを開けると中身があらわになる。


 なんとケルベロスのフィギュア!?


いや、違う。これはケルベロスの召喚石らしい。


「ねぇー、ニール。何が出たのー」


「それが、これが……」


 僕の手のひらにはケルベロスを形どった真っ黒のフィギュアのような召喚石がある。


「これは、ちょっと可愛くないかなー」


 ルイーズ的には本格志向のフィギュアは微妙らしい。いや、そうじゃない。


「これは、ケルベロスの召喚石。戦闘の時に願いをこめて投げ入れるとケルベロスを召喚できるみたい」


「ケルベロスってランクAの魔物だったような気がするんだけど……」


 アルベロはケルベロスのランクを知っているらしい。


「それが味方として召喚できるにゃ?」


「そういうことみたい」


 ランクAというとシーデーモンを思い出す。あんな災害レベルの魔物を味方として呼び出せるというのはまさにチート級。これはとんでもないアイテムを手に入れたのかもしれない。


「そのケルベロスちゃんは何回も召喚できるのー?」


「あっ、いや、一回だけの使い切りみたい」


「まあ、それはそうかー。ランクAだもんねー」


 こんな切り札があったらアローヘッドが追いかけてきたとしても、なんとかなりそうな気がしてきた。


 ただ、本当に信頼していいのか。頼りにしていて、微妙な戦力だった場合に厳しい状況に追い込まれてしまう可能性も否定できない。


 同じことはキャットアイも考えていたようだ。


「一回しか使えないなら、試すこともできないにゃ。ちょっも扱いが難しいにゃ」


 猫さんはケルベロスの扱いに慎重の構え。計算できない戦力なので使いどころが難しいと思っているのだろう。


「それならさー、もう一回出せばいいんじゃない?」


 そう。ルイーズの言う通り。ケルベロスの召喚石をもう一個出せばすべてが解決するということ。


「そうだね。まずはどんどん回してみよう」


 ということで、小銀貨五十枚分回した結果はこんな感じだった。


 ●ケルベロスの召喚石×一個

 ●マハリトのスクロール×二本

 ●ハリトのスクロール×五本

 ●ワイルドファングのキバ×十個

 ●ワイルドファングの骨×二個

 ●ワイルドファングのお人形×三体

 ●腐りかけの肉×二十七個


 五十回まわしてみたものの、ケルベロスの召喚石は残念ながら一個しか出なかった。


 しかしながら、オルトロスガチャへの進化は二回あり、マハリトのスクロールが出ている。ただ、暗雲からの虹色演出になかなか辿り着けない。


 ちなみに、残りのほとんどが腐りかけの肉だった。この肉はワイルドファングが好物のようで、群れを呼び寄せる効果があるらしい。もちろん、近くにいないと反応はしてくれないらしいけどね。


「このワイルドファングのお人形は私がもらうねー」


 お人形はすぐにルイーズのバッグにつけられていった。やはり、ルイーズはこのデフォフルメされたお人形が好きらしい。


 さて、こうなるとどこまでガチャを回すべきなのか悩ましい。五十回まわして召喚石一個。


今は多少お金には余裕がある。進化が見込めるガチャなのなら、もっと回してもいい。


 ということで、みんなと相談して追加でもう五十回のチャレンジをすることにした。


しかしながら内容は芳しくなかった。


 どうやら僕の最高潮まで高まったガチャ運はここで終了らしい。


 ●ハリトのスクロール×五本

 ●ワイルドファングのキバ×十個

 ●ワイルドファングの骨×十個

 ●ワイルドファングのお人形×一体

 ●腐りかけの肉×二十四個


 しかも、ガチャガチャの中のカプセルがすべて放出されており、もう回すことができなくなっていた。


 残念でならない。


 腐りかけの肉が山のようにあって、部屋の中がかなり臭くなっている。


 ルリカラが匂いを嗅いでいるけど、食べようとはしなかった。やはりルリカラは肉よりも魚派なのかもしれない。


 しかし、小銀貨ガチャでも種類によっては進化するという新たな気づきを得られただけでもよしとすべきだろう。


 ひょっとして、進化の可能性がある魔物の場合こういった演出が起こり得るのではないだろうか。


今度ゴブリンガチャが出た時にでも試してもいいかもしれない。


 ゴブリン→ホブゴブリン→ゴブリンファイター→ゴブリンロード→ゴブリンキング


 こんな感じの進化らしいけど、これだとキングに辿りつくまで四回も進化が必要なので僕とルリカラの精神が持たないかもしれない……。

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