#6 俺の好きになった人が巫女さんだった件【前編】
「こんな……こんな非科学的なことってありえないわ……どうなってんのよ一体……」
ショックを受けている様子の
「ねえ。この帯たちは、一体何なの? まるで意思を持っているみたいだけど」
ゆりあが問うと、美月さんが
「──夏輝くんを
──嫉妬の物の怪だって? 誰かに激しく嫉妬されるなんて、身に覚えがないのだが。
「
「嘘よ! こんな非科学的なこと……私は絶対に認めない! 何か仕掛けがあるに決まってんでしょ!」
「瀬戸くん、助かるよね? 何かあたしに出来ることはないかな?」
ゆりあが美月さんに心配そうに尋ねる。
「全身に、
美月さんが帯に巻かれている俺の上で、小刀で空中に
「──ねたしとは 何をいふらん もとよりや ままならぬこそ
美月さんが
「きゃっ!」
同時に、雪那が後ろに転んだ。
──
苦痛に顔を歪めながら、右腕を押さえて美月さんをきっと
「何すんのよ!」
「──
美月さんが、まっすぐに雪那を見た。神事に
いつもはおとなしく
「な、何よ! あんた、私が夏くんのことを好きで、嫉妬してるって言いたいの!」
「違うのですか?」
──雪那が俺に恋愛感情を?
唐突過ぎて、頭の中で状況が整理できない。
「雪那も瀬戸くんを……?」
ゆりあも目を丸くしている。
「迷惑なこと言わないでよ! 私は夏くんなんか好きじゃないんだから! 一緒にいると不幸が移るし!」
──心に突き刺さるその言葉は、あの時と同じ。
そこから俺は、雪那が苦手になってしまったんだ。
──それが、本心じゃなかったと言うのか?
「雪那さんの心が悲鳴を上げているようです。ご自身の心に嘘をつくのは、もう限界なのでは?」
「何よ……何よ……!」
美月さんの言葉に、雪那の目から涙がぼろぼろとこぼれ落ちた。
ばらばらになった
美月さんが小刀で再び
「──いかにして
雪那が地べたに座り込み、力のない声で言った。
「……そうよ。夏くんが
「──その努力は間違っています。欲しいものを手に入れたいならなぜ、正しい努力をしないのですか?」
鈴の音のような声で、雪那を
「
雪那の怒りの声とともに、地面に散らばった蛇帯が恐ろしいほどのスピードで繋がり、俺を取り巻き絞めつける。
「ぐっ!」
──来る。背中に、
背中に神力を流し、まず毒針を
「もう
神力を食らった蛇帯が
「──
「蛇帯は嫉妬の物の怪です。
美月さんが雪那の所へ歩いて行く。
「こっちに来ないでよ!」
「夏輝くんが優しいからと言って、何をしても許されるわけではありません。好きなら
美月さんが雪那にハンカチを差し出した。
雪那の瞳から、涙が一つ二つとこぼれ落ちていくのが見える。
いつも強気な雪那だけに、その姿はとても痛々しい。
「ほっといてよ!」
「──ご自身の気持ちに素直になっては? 雪那さんの心が泣いていますよ」
その手を振り払おうとする雪那の指を、美月さんがそっと両手で包み、ハンカチを握らせた。
「優しくしないで! あんたも夏くんも、ゆりあも嫌い。みんな大嫌い……」
うっ、と
「雪那の気持ちに気づかなくて本当にごめん。知らなかったとは言え、あたし、雪那を相当傷つけてたよね? でも、雪那だって頑張ってみたらいいじゃない? 『努力次第で運命は変えられる』ってあたしは思ってるから」
出てきたのは、頑張り屋の白川ゆりあらしい言葉。
雪那が声を震わせた。
「本当にごめんなさい。謝れば済むレベルの話じゃないってことは分かってるわ。もう私には、夏くんとゆりあのそばにいる資格なんてない」
雪那のしたことは許されることではないが、──でも。
俺は、走り出そうとした
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330662264321737
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