#3 歪む真実
見たことを無かったことにしてしまいたいとも思うけれど、お店の人が仕入れてきた大切な商品を
「俺、注意してくる」
「
俺と美月さんがひそひそ話していると、万引き女が再びバッグから盗んだイヤリングを取り出して、涼しい顔で売り場へ戻すのが見えた。
なぜ盗んだ品を元の場所へ戻したのだろうか。
全く意味が分からなかった。
女が俺達の隣までつかつかと歩いてきた。
そのまま、品を次々と手に持っては
女との
目を
それは、あろうことか美月さんにプレゼントする予定のムーンストーンのネックレスだった。
そして、俺の
──目が合った。
長い前髪の
一瞬、
「追いかけなきゃ」
「私、お店の人を呼んできます。夏輝くんは先に行っていてください」
「分かった。お願いするよ」
美月さんが
ドアを開けて店を出ると、万引き女が自転車に乗る所だった。
「待て!」
俺が走り出すと同時に、女が自転車を立ち
桜町の入り組んだ
こちらの
「ナツキ、大丈夫かい。少し息が上がってきているけど」
「大丈夫だ。俺は
つづらからの返答はなかった。
⛩⛩⛩
昨日アプリで見た桜町の地図と、ショップ前にあった
確か、左へ行くと工事の
少し先回りするようにして
俺はスピードを上げ、右折させないようにわざと女の右側に
女が俺の
──計算通り、迂回路に出た。アクセサリーショップは目の前だ。
ここなら狭いし、他に通行人がいるからスピードも出せまい。
最後の
「待てっ!」
行きかう通行人が、ぎょっとした目で俺達を見る。
その時、女が
「助けてください。私、この人に
サラリーマンが、俺と女を
「え? 違いますよ! その女性がお店の品物を
「
重苦しい長い髪の合間から現れた女の
一億円あげるから私を
「あの高校生を捕まえろ! 誰か、警察に連絡してください」
俺の言葉には耳すら貸さず、女に
これは
いきなり立場が逆転してしまい、
その時、目の前のアクセサリーショップから、
続いて、パーマがかった髪に、細身のジャケットを着た男性も出てくる。店長と
店長が万引き女を指さして叫んだ。
「その女性がうちの店の品物を万引きしました。こちらの彼女とそこにいる彼が
「何だって」
店主の言葉に、サラリーマンが
あっという間に人だかりができた。
「私はやっていないっ」
中から転がり落ちてきたのは、あのムーンストーンのネックレス。
「
「違うんです。誰かが私のバッグに、これを入れたんです。私は
まだしらを切り通そうとする女に、完全に頭に来た俺は大声で言った。
「この品物は、お店の人がお金を払って苦労して仕入れてきたものだ。あんたのやっていることは
「違います。これは誰かの
どれだけ言っても悪びれもせず、誰かのせいにして罪を認めようとしない女。
「どっちの主張が正しいんだ?」
「
俺達を取り囲む
女の
──さっき目撃した光景は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます