#2 氏子デビュー
「ところで
美月さんが俺に向き直った。前髪に
「つづらの
「
その言葉に
「私の両親は、
──美月さんにご両親がいない理由は、そういうことだったのか。
俺が言葉を
「全てを
つづらが俺の
「ナツキ、安心しなよ。ボクには人間よりははるかに長い寿命があるし、
「なるほど。
俺のたとえがおかしかったらしく、宿禰さんも
「美月さんのご両親の時には、どうしてつづらの力を借りられなかったのかな?」
「いくら人間より寿命が長いと言っても、
「神様のお考えはよく分からないな」
宿禰さんが「うむ」と言った瞬間、ふわふわと白くて丸い
全部で十匹くらい、
「何だこいつら!」
「月姫神社の
「居候物の怪?」
「ナツキと一緒だよ」
「この白いふわふわと俺が同じ立場?」
──複雑な心境だ。
「あやかしの
宿禰さんが
ミーミー鳴いて美月さんの後ろに隠れる白魂達。
「おじいちゃん、やめてください。この子達は何も悪い事はしていないんです」
美月さんが白魂達をつつくと、ミーと鳴いてどこかへ飛んで行った。
「美月や。ぬいぐるみを被った
宿禰さんのお説教に、しょんぼりとうなだれる美月さん。
「そう言えば、ここは神社なのにどうしてこういう奴らが出入りできるんですか。
ふと
「まことに言いにくい話じゃが、
「そうなんですか」
「うむ。今も変わらず
美月さんも
「今は家族と氏子さんだけで月姫神社をようやく
俺を助けてくれた蓬莱家の皆さんのために、何か恩返しがしたいと俺は思った。
「俺にも何かお手伝いさせてください」
「
宿禰さんが
「さて、そろそろ春祭りの片づけの時間じゃな」
「俺も行きます」
桜の花びらを運ぶ風の冷たさに
氏子さん達の
「今日も朝早くから有難うございます。下宿生の
「夏輝くん。
──え? いま、なんて?
一度にさらっと言われたが、覚えられない。おじさん達が皆同じになって見える。
「昨日の春祭りで
丸顔の
頭をかきながら恐縮していると、総代さんに物凄い
「今時の子は、我慢強さがない子も多いと聞いているが、君はどうかね」
疑うような目。年の頃は
氏子さんは五人で、
「おおい、皆さん。
「はいよー」
比田総代の声に、氏子さん達が
俺も慌てて脚立に乗って提灯の取り外しにかかるが、こちらへ歩いてきた比田総代の目がぎらりと光る。
「違う」
「ひえっ……す、すみません」
「先に下の針金から外さないと
総代さんの
何か
これも総代さんから「違う」とダメ出しを連続で受けながらなんとか片付けた。早くも悪いサイクルに入ってしまった気がする。
ようやく
「疲れた……」
氏子さん達は社務所で
桜は満開だというのに、空は銀色の冷たい
「ナツキ、大丈夫? 顔色が悪いよ」
つづらが服の中から顔を出した。
見上げる空には雲が垂れこめていて、常世はおろか将来の
「帰りたい……」
──でも、このまま常世に帰れなかったとしたら?
急に
神社をぐるりと囲む
目を
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