#3 一人きりの戦い
ぼこぼこぼこ、謎の物体が
「つ、つづら。あいつ一体何? なんかヤバイ感じがするけど……」
「正体不明の
つづらが
──その瞬間、白い
「どうしたんだ、つづら」
「
力を失ったつづらに貼りついた
おそるおそる
気がつくと、
「まずい」
俺はつづらを抱きかかえて走り出した。
──どくん、という音が
足が石のように固く
神力を放つべく、右手を構える。
──右手が光らない。
いや、光らないだけではない。いつの間にか、右手全体が金縛りで動かなくなっていた。
次々に
つづらが動かない、神力も使えない。
一体どうすればいいんだ?
俺は恐怖心でパニックの状態に
──どくん。
また強い金縛り。今度は上半身が動かなくなった。
なす
もうじき氏子さん達の
とにかく誰かに、見つけてもらわなきゃ。
視界の端に、白い何かが映る。
ちょうど良かった。
俺は、唯一動く左手で自分を指さし、次に
「ミーミー」
分かってくれただろうか。
俺とつづらが
「ミ?」
白魂が首をかしげた。
──ダメだこいつら、状況を理解していない。
黒い巨人がこちらにゆっくりと歩いて来る。
不気味な長い腕が黒い球の分裂によって
「ミー!」
白魂、お前らには本当に
俺は首を
左腕も動かなくなり、抱いていたつづらを落としてしまった。
いつの間にか黒い玉が
つづらの姿は黒玉に飲み込まれてもう見えない。
ぎちぎち、と首が
──そう言えば
それはきっと、こういう事故だったのだろう。
つづらは
残っている僅かな
喉を絞められる苦しみの中で必死に考えていると、
全身の中で唯一動く
神力を右手から目に移動させるイメージを持ち、黒い巨人を見下ろすように
神力が目に宿り、視界が明るく開けたと思った瞬間。
ぱちん、と黒い巨人の頭の部分の黒玉が弾けた。
──いける。
ぱちんぱちんと黒い巨人の頭の玉が破裂して消えてゆく。
そのままゆっくりと見下ろしてゆく。
黒い巨人が俺の首をぎちぎちと締め上げ、消えてたまるものかと
「うっ」
──
俺は右手をかざし、自分の首を締めている黒い巨人の腕を光り輝く神力で焼き切った。
げほげほっ、と咳き込みつつ地上十メートルの高さから地面へと落下する。
着地の衝撃を両足に受けてよろめきつつも、
黒い巨人の頭部が俺めがけて突っ込んでくる。
対抗するべく
毒葡萄を結集させた黒いエネルギーと、青白く輝く神力がぶつかり合いせめぎ合う。
──ダメだ。神力の消耗の方が早い。このままじゃ押し負ける。
「ご
振り返ると、
──涼やかな鈴の
境内を埋め尽くしていた黒玉が消え、太陽を覆い隠していた
「つづら!」
美月さんに礼を言い、つづらの姿を探す。
参道、手水舎、稲荷社とぐるりと見回し、鳥居の元に倒れているつづらを見つけた。
駆け寄って蛇除けの呪符をどうにか
「大丈夫か、つづら」
「ありがとう。助かったよ。よくあの場を乗り切ったね」
「ああ。美月さんが助けてくれた」
「
美月さんの後ろには、白魂達が控えていた。
「そうか。美月さんを呼びに行ってくれてたんだ。てっきり逃げたんだと思ってた。ごめん」
「ミー!」
白魂達が
「ごめん、ごめんってば」
しばらくの間、白魂達につつき回される俺だった。
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