#4 一難去ってまた物の怪
丸い桜餅は緑の桜の葉でくるまれ、甘い香りを漂わせている。
俺との間に盆を置いて、ベンチに腰を下ろす美月さん。
「先ほどの
「高坊主?」
「ええ。見上げれば見上げるほど大きくなる物の怪です。昔、
美月さんが膝の上に重ねた手を見つめた。
「高坊主かぁ。地方によっては『
つづらが言った。
「見越し入道は『
「確かに、
「得体の知れないものは怖いですが、見下ろしてしまうと案外怖くないものなのかも知れません」
美月さんがふふっと微笑んだ。
──
俺はあの時、自分の悪運を嘆き、これから起こる更なる不幸に
だけど、いざ突き当たってみると、物事とは意外と何とかなるものなのかも知れない。
一人で納得していると、美月さんが桜餅をすすめてくれた。
「おばあちゃんの手作りの桜餅、美味しいですよ」
「いただきます」
桜餅を
香ばしいほうじ茶を
「ああ、幸せです」
美月さんが桜餅を食べながら
「ミヅキってさ。あんこと、ゆるふわな物の怪に目がないんだよ」
「へえ、そうなんだ」
『可愛い物の怪』と、『あんこ』か。
いかにも女子が好みそうな『可愛いものと甘いもの』の組み合わせだが、物の怪とあんこは前代未聞すぎる。
思わずクスッと笑ってしまった。
「え? 何かおかしいですか?」
「美月さんらしいと思って。ちょっと面白くて」
「え、そうですか?」
「いや。ごめん、ありがとう。なんか俺、元気が出てきたよ」
「物事はさ、最初はうまくいかなくて当たり前だよ。でも
つづらが言った。
「つづら様の言う通りです。この調子で行きましょうっ!」
美月さんが片腕を振り上げた。
「よし。頑張るぞー!」
俺も
でも、美月さんやつづらと話しているうちに、心が
⛩⛩⛩
休憩後、再開された
最後のひと
身体も温まり、作業にも少し慣れて動けるようになってきた
いつの間にか気持ちが吹っ切れ、
『
「以上で作業終了です。お疲れ様でした」
総代さんの声に、その場の空気がふっと緩む。
ほっとしていると、総代さんがぎろりと目を光らせながら「
──またも、鋭いまなざしに
もしかすると、また何か失敗でもしてしまったのだろうか。
「あんた、最初はちゃらちゃらしてるかと思ったが、真面目で
意外にも、総代さんの口から出たのは
「……あ、有難うございます。俺、
「あんた、
力士体型の
「あいたっ!」
よろめいた俺が手をついた先には、
石は想像していたよりも軽く、俺の体重を受けてずれた。
「ああっ、ダメです! その石を動かしては」
美月さんが俺を
石をずらした下の穴から勢いよく、無数の
──ユニークな姿をした、
雷鳴が響き、途端に雨が降り出した。
たまらなく嫌な予感がした。美月さんの顔が青ざめている。
「あれは
──ああ、何という不幸。
もしかすると、さっき落ちていた
「ど、どうするんじゃこんなにたくさん……」
動揺する宿禰さんと、一目散に逃げ出す氏子さん達。
「あの中に数百年封印されていたヤツがいる。
つづらが困ったように言う。
これはとんでもない事になってしまった。
イラスト
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330654178024157
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