#5 狒々(ひひ)
時刻は午前二時、草木も眠る
俺達は、
夜の青に染まる拝殿前の廊下。
祓い切れなかった物の怪達が、こちらに逃げてくる。
「ナツキ。相手の力の波が弱まるタイミングを狙って
肩の上のつづらに教えられながら、右手をかざして青白く輝く神力で祓っていく。
右手から放つ神力に、物の怪達が淡い光を放って消滅していく。
段々と祓いの要領が分かってきた。
「──きゃあっ!」
長い体毛、鋭い牙と爪。
その姿は猿に似ているが、
美月さんが化け物に向かって
つづらが言った。
「あいつは
「ひひひ。ひひひ。女……女……女女女若い女……」
「やめろ見苦しい!」
俺は美月さんをかばい、物の怪の前に立ちはだかった。
男なら興味を持たれることもないだろう。
突然目の前に飛び出してきた俺を、
「……お前でもいいぞ」
「げっ」
どうやら
攻撃をバックステップでかわすが、パワー系の物の怪であるからか、力の波が弱まるタイミングが今一つつかめない。
「やば!」
右手、左手と交互に繰り出してくる鋭い爪が風圧とともに俺の前髪をかすめ、切られた髪が数本、はらはらと落ちる。
思わず背中が恐怖で
「ひひ。いい表情だ。思いきり怖がらせてからなぶり殺しにすると美味いんだよな。ひひひ」
「悪趣味……」
俺が
「孫たちに手は出させん! このわしではどうじゃ!」
「……」
一瞬、場が静まり返った後、
「ひひひ! お前に決めたぞ!」
「一方的に決められても俺にも選ぶ権利というものが!」
「ええい! わしの所に来んかい!」
──なぜか気を悪くしている様子の宿禰さんだった。
渡り
じわじわと精神的に
ふいに、後ろから背中をつつく者がいる。
振り返ると、そこに
「うわっ!」
飛びすさって距離を取り走り出そうとした時、床の上で足を滑らせた。
「ひひひ! 恐怖におののく姿……興奮するのう!」
体勢を
「お前まさか……神力使いか!」
すぐさま宿禰さんが走ってきて
「はあっ、はあっ、はあっ……」
おさまらない
命の危機の他、色々な意味での
「ナツキ、みんな、お疲れ様。今のが最後の一体だよ」
⛩⛩⛩
物の怪退治が終わり、俺達は
障子の向こう側が明るくなり始めていた。
社務所と
宿禰さんの
「皆、ご苦労じゃった。寿命が縮まったわい……」
「やっと終わりましたね。お布団が恋しいです」
美月さんが言うと、つづらが首を伸ばした。
「さすがのミヅキも物の怪にはもう
「
ここぞとばかりに集まってきた
⛩⛩⛩
──午前十時。
ひと眠りした俺達は、物の怪達に荒らされた境内や拝殿の片づけ作業に追われていた。
「これでもう大丈夫でしょう」
美月さんが封印の石の前で、腰に手をあててふっと息をついた。
正面には「
文字の隣に描かれた化け物達のイラストがシュールで怖い。
ぱんぱんと手をはたき、腰に両手を当てる美月さん。
「……これで誰も近づけないはずです。これで誰も!」
「すみません、本当にすみませんでしたっ!」
美月さんのあまりの
⛩⛩⛩
■第2章、完結です。最後までお読みいただきありがとうございました!
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