第3章 献花夢幻(けんかむげん)の大混乱
#1 夏輝と美月の通学路
「夏輝くん、早く早く。急がないと遅刻しますよ」
セーラー服姿の美月さんが
「すいません。今行きます」
かといって今着ている黒い学ランもシンプルすぎる気がするし、
「なんか変じゃないかな」
金ボタンに触れると、無機質な冷たさが指先に伝わる。
「すごく似合ってますよ」
「あら。夏輝くん。
美月さんが微笑み、
「ありがとうございます」
何だか照れてしまう。
なぜ俺が
とはいえ、
バイトして
これから通う
拝殿で手を合わせると、俺と美月さんは二人揃って月姫神社を後にした。俺の肩の上には月姫命の
月姫神社の
美月さんが片手でそっと白魂達に触れる。
「白魂ちゃん達、留守をお願いしますね」
「ミー」
左側を歩く美月さんをちらりと横目で見る。
後ろで髪をまとめている巫女装束の時とは違い、長い艶やかな髪を下ろして歩く姿はいつもと違って新鮮だ。
身長は俺の頭一つ分くらい小さい。
今気がついたが、俺はもしかすると生まれて初めて女子と一緒に通学しているのではないだろうか。
彼氏だと間違われたらどうしよう。
──ああ、何という
俺は一人で浮かれながら、
鳥居を出て右に曲がり、迷路みたいに複雑な古びた町の中を歩いてゆく。
毛むくじゃらの丸っこい物の怪が古い家の裏戸から出てきて、別の民家の庭へ素早く入りこむのが見えた。
「美月さん、今の何?」
「
「……」
「
せっかくの可愛い女子との通学タイムだったのに、気分をぶち壊された。
しかも、不幸を運んで来る物の怪を見るなんて
「邪魔しやがって!
「ど、どうしたんですか。夏輝くん。そんなことしてたら初日から遅刻しちゃいますよ!」
怒りのままに
俺のお
イラスト
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330656506093917
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