#2 桜吹雪の中の巫女
「
「うん。月姫様から与えられた神力は、ボクの命の一部でもある。キミに降りかかる
「災いを……」
「うん。キミとボクは縁の糸でつながった。離れても、ずっと友達だよ。キミが少しでもいい人生を送ることができるように、毎日祈るよ。どうか気をつけて帰ってね」
せっかく友達になったばかりなのに、もう別れなくてはいけないなんて。
いても立ってもいられなくなって、石段を
「あのさ。もう少しだけ、つづらと話をしたいんだけど」
「ごめんね。ボクもナツキともっと話がしたかったけど。でも時間がないんだ。これでお別れだよ」
すげなく断られ、立ち尽くす。
「それに、この鳥居から先はキミは足を
楽しげな
「何で俺は鳥居の向こうに行っちゃいけないの? 小さい頃、この神社の
「キミがあちら側の人間じゃないからだよ」
それならば、あの向こう側には何があるというのだろう。神の世界か、それとも
──行ってみたい。あの鳥居の向こう側へ。
「百年に一度見られるか見られないかの
行灯の炎が
魔女のような
「お前さん、あらゆる
「それさっきも言われたけど、本当ですか? マジでショックなんですけど……」
「どれ、少し詳しく見てあげよう」
痩せた
鳥居の中に引き込まれた。思いもよらぬ力の強さだ。
「ナツキ、危ない。逃げるんだ」
つづらが叫んだ。
老婆が俺の体を自分の側へぐいと引き寄せようとした瞬間、俺の右手が白く輝いた。
「神力使いか……始末しておくか」
老婆が枯れ枝のような手を引っ込めたかと思うと──
──何が起こったのか分からない。
参拝者達が散り散りになって逃げ始める。
「ナツキ。とにかく奥の
「つづら。あいつは一体何」
「
「魂を喰われるって……」
――こんなことがあるはずがない。
そう思うが、今見ているものはまぎれもない現実だ。
「……どうしていつも、俺ばかりがこんな目に!」
白蛇つづらを抱きかかえた俺は、
化け物に追いかけられる恐怖感で身の毛がよだち、手のひらが
逃げ
「おい、どこ見て走ってるんだ」
「すみません」
振り返ると、忌津闇神がすぐ後ろまで迫ってきていた。
後ろの方で誰かのきゃあっ、という悲鳴がした。
拝殿までもう少し。とにかく息の続く限り走れ。
「ナツキ、足が速いんだね」
「うん。俺、足の速さだけは誰にも負けたことがなくて」
忌津闇神達が飛び上がり俺の行く先に回り込んだかと思うと、空中から
びちゃびちゃと
「げっ」
「ナツキ。もう少しだよ。ご
「分かった」
迫りくる黒い手をかわし走り抜けた瞬間、春風が吹き
拝殿前に設けられた舞台の上には、金色の
強烈な
振り返った巫女が、俺を見る。
彼女が振り向いた瞬間――まるで時間が止まったかのように感じた。
舞い散る桜吹雪の中のその姿は
イラスト「桜吹雪の中の巫女」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます