#3 不幸な高校生、神力使いになる
「つづら様。ご無事だったんですね」
桜吹雪の中で
「ミヅキ、ただいま。ボクの力が満ちるまで時間稼ぎをしてくれるかい」
「分かりました」
ミヅキ、と呼ばれた巫女が忌津闇神の前に立ちはだかる。
上空からこちらめがけて伸びてくる黒い手に、巫女が五色の長い
黒い手が、蛇のように
「
「おじいちゃん!
美月さんが叫ぶと、老宮司はお
忌津闇神の一部が切り離されて蒸発した。
小さくなった
動けないでいると、美月さんが振り返った。
「私が
忌津闇神が、美月さんを警戒しながらも俺に向かって一直線に飛翔してくる。
吐き気を催す強い
老宮司の横笛の音に合わせ、美月さんが手に持つ扇を頭上にかざし、鈴を振る。
飛び掛かってきた忌津闇神が清らかな鈴の音を受けて桜吹雪となって舞い散り、消えた。
まずは一体。
次々にスピードを上げて忌津闇神が来る。残りは六体。
美月さんが舞いながら扇を
次に扇を閉じ、頭上に向かって広げて
「危ない、右側!」
思わず俺は叫んでいた。扇を持っていない方の手をめがけ、忌津闇神が襲いかかる。彼女が右手に持っていた鈴を鳴らした。その音で、忌津闇神が消える。
その舞は、魔を
四体、五体、六体。
美月さんが忌津闇神に視線を送ったまま、ゆるりと装束を
「次で
その時だった。
最後の一体が黒い液体を美月さんの手首めがけて吹いた。
「──!」
美月さんが苦痛に顔を歪め、鈴と扇を取り落とした。
右手首の皮膚が、
「美月、大丈夫か」
足首を火傷して転倒する老宮司。痛みに歯を食いしばり、すぐには動けない様子だ。
「──だ、大丈夫ですか?」
何かしなければ、と思うのに、足が一歩も踏み出せない。
相手は化け物。神社関係者にさえもどうにもできないものを、一般人の俺が何とかするというのはどう考えても無理だ。
その時、つづらの体が淡く
「準備ができた。ボクとナツキで、
「しかしつづら様。その男の子を巻き込むわけには」
心配そうな老宮司に、つづらが首を横に振る。
「大丈夫だよ。ナツキの体には
「何ですと。どうしてその子が神力を」
驚く老宮司に、「
「つづら、一体どうやってあいつを
「その手の光をあいつにぶつけるんだよ」
「ええ……」
怖い。腰が引けて、どうしようもない。
「大丈夫。ボクを信じて。『友達』でしょ」
忌津闇神が、びちゃびちゃと黒いヘドロのような液体を参道にまき散らしながら俺たちの方へ近づいてくる。
鼻の奥の
気持ち悪いから早く祓ってしまいたい。
それに、美月さんと宮司さんも心配だし。
「──分かった。つづらを信じるよ」
覚悟を決めて心を静めると、つづらの力を宿した右の
イラスト
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330655605707619
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