#2 悪王子(あくおうじ)
月姫神社には、
赤い鳥居が美しい
月に一度の稲荷社でのおまつりを前に、社務所の横の和室では
俺も月姫神社の白い
ラジオから、ニュースが流れてくる。
「──
「水不足ですか」
声をかけると、
「うむ。
「雨乞いって、
「それも一つの雨乞いじゃが、色々なパターンがある。雨が降るまで祈り続けたり、
「面白いですね。ちなみに月姫神社の雨乞いはどんな感じなんですか」
「年に二度、
「五霜山の神事って、確か明後日でしたよね」
明後日の神事には、なぜか俺だけが同行することになっていた。
「うむ。今でこそ
宿禰さんが言葉を
生贄という言葉が生々しすぎて実感が湧かないが、女性を連れていかない方がいい山なのは理解した。
それで今回は、美月さんが来ないのか。
ちょうど、舞の
先ほど美月さんのことで思い悩んでいたのを
「まあ、今では生贄を出すことはなくなったがね。さて、
⛩⛩⛩
一時間後、稲荷社での神事を終え、
突然、その
「いかん。美月、早く押さえるんじゃ」
「はいっ!」
宿禰さんと美月さんが目にも止まらぬ速さで祠へと走り、がたがた揺れている木の扉を押さえ始めた。
俺も扉を抑えたが、中から漂ってくるただならぬ気配に
「あの。前から聞こうと思っていたんですけど、ここには一体何が祀ってあるんですか」
美月さんと宿禰さんが一瞬顔を見合わせた後、慌てて俺から目を
「たいへん有難い神様じゃよ」
「はい。大変ご
──
「いかん。封印が解けかけておる。二人とも、もう少し強く押さえとってくれ」
宿禰さんが新しいお
姿を現したのは──すらりと背の高い、思わず見とれてしまうほどの
色白の
その身に
ただ、
「
張りのある、伸びやかな低音の男声。涼やかで、それでいて落ち着いている。
宿禰さんが床に頭を
「宮司よ。この封印が解けるということは、おおかた世が水不足になっているということであろう?」
「そ、それは……」
宿禰さんが言葉を
「水不足を解消する程度の雨など、いとも簡単に降らせられるぞ。ただし」
美青年があやしくも美しい笑みを
「その
──美月さんがこの美青年と結婚?
俺の頭が、雷で撃たれたみたいに真っ白になった。
「さあ巫女よ、オレと一緒に来い」
そのまま美月さんの手を取ると、強引に悪王子社へ連れていく。
青い狩衣姿のその背中は逆三角形に引き締まっていて、非常に均整の取れた体型をしている。悔しいが、同じ男から見ても勝ち目のないぐらい
「手握ってる! イケメンなら何をしても許されるのかよ」
「
聞き慣れた声に振り返ると、そこには
宿禰さんが事の
「──あのお方は『
「悪王子? 『悪い神様』って事ですか?」
「いや、『悪』とは『強い力』という意味じゃ。かつて悪王子さまは
「その後、我が先祖──
「その封印が解けたんですか」
「うむ。わしとて孫を差し出したくはないが、
「俺、様子を見てきます」
恐怖で震えているつづらを肩に乗せ、悪王子の後を追う。
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