#1 届かない距離
七月の土曜の早朝、俺と
今年は
緑豊かな境内に、赤い橋のかかった小さな川が流れている。左側奥には
小川の水音を聞きながら、特に会話もなく黙々と、雑草の芽を
「
「それはこっちの話だよ。美月さんこそ、
「はい。実を言うと、少し心細くて。でも私、気がついたんです」
乾いた風が吹き、
「──いつの間にか夏輝くんを頼りにしていたんだなって」
落ちてくる
風に
思わず心を持って行かれそうになり、
その笑顔に見とれていると、美月さんが嬉しそうに言った。
「あ、見てください」
五つに分かれた、伸びやかな緑色の大きな
「ユリが咲きそうです。このユリはとても丈夫で、手入れをほとんどしなくても毎年綺麗に咲くんですよ。私、ユリの花が大好きで……」
よほどユリが好きなのか、美月さんはにこにこと
花や虫を
「美月、ちょっと来てちょうだい。
住居の奥から千鶴子さんの声がした。あんこと聞いて、美月さんの瞳が輝きはじめる。
「──夏輝くん、つづら様。また後で」
彼女が笑顔で手を振り走り去る。白魂がミーと鳴いて、彼女の後を追い飛んで行った。
⛩⛩⛩
自室に戻り、
先程の
俺はいったいどうしてしまったと言うのだろう。
美月さんは俺の大事な友人で、お世話になっている月姫神社のお
白川ゆりあにも申し訳ないような気もするし。
第一、俺はいずれ
俺は理性を持って自分に言い聞かせたが、胸を締めつける切なさと、
自分の気持ちを確認するため、静かにスマホを取り出す。
前列に女子三人、後列に男子三人。全員ではにかみつつの
何事も
「ミヅキを好きになったら、その子を
突然のつづらの言葉に
「ま……まさかつづら、俺の心を読んでる?」
「いいや。ナツキの顔に全部書いてあるだけだよ。そもそもナツキはその子と付き合う前にふられたんじゃなかったっけ」
「まあ、急いで
俺が痛い頭を抱えている間に、つづらがとぐろを巻いて眠ってしまった。
──そんな
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