#6 憑きものとの交渉
何をされるか分からない恐怖を感じているのを
俺は、
「そいつは友人なんです。どうしたら返してくれますか」
「私と遊んでくれたら返してやってもいい」
「いつまでですか?」
「
時計を見た。
そんなことに付き合っていたら間に合わない。
返事を
「できないとでも
卜部の全身ががくがくと
「うう、うう。ああ」
卜部が
「ほら、ほんの二百年分流しただけでこの通りだ。千年という長い時間の記憶、普通の人間の
「わ、分かりました。お相手いたします」
卜部の中の憑きものが、再び
「
──
「では、『だるまさんがころんだ』はどうでしょうか? つづら様も入れて、四人で」
「あ、それなら俺も知ってる」
「ほう、面白そうだな。説明しろ」
俺と美月さんでルールを簡単に説明する。
じゃんけんで憑きものが鬼になったので、美月さんとつづらと三人で配置につく。
「憑きものの正体って何なのかな」
「分かりません。でも、力はかなり強いと思います。せめて正体が分かれば弱点を突けると思うのですが」
「
つづらが舌をちろりと出し、引っ込めた。
⛩⛩⛩
ひとしきり遊んだが、卜部の命がかかっているので、
俺達三人は示し合わせ、わざと少し動いて鬼に捕まってみたりして、最後の方で憑きものが勝つように調整した。
「ああ、また私の勝ちだ。お前達、もっと私を見ろ。そして褒めたたえろ」
憑きものが勝つたびに、すごいですねー、さすがですねーと
さすがに最後の方になると疲れてきて、
ごく自然な笑顔で拍手を送り続ける美月さんを、俺は心から尊敬する。
「人にそういうの
呆れる俺に、美月さんが言った。
「あれだけ
「美月さん、あと十五分で約束の時間だよ」
「──このお
俺も同感だが、しかしどうやって切り上げよう。下手をすると憑きものの機嫌を
「次は何をしようか」
憑きものが言った。これだけ遊びに付き合ったのにもかかわらず、一向に解放される気配がないことにげんなりする。
「しかし普通の遊びには
憑きものが
水干の袖が風にはためいた。
「そうだ、この少年の体を賭けようか」
憑きものが、くつくつと笑った。
次が最後の勝負だとすれば、
しかし、確実に勝てる勝負で
俺は名案を思いついた。学校一を誇る俺の足の速さならば、きっと勝てるはずだ。
勝負をかけっこに持っていくように
息をゆっくり吸って、吐き出す。
「かけっこはどうです?」
「──悪くない」
軽い感じでふっかけると、憑きものの目にぎらついた光が満ちた。
よし。勝負に乗って来た。
俺は少しの恐怖を覚えつつも、ぞくぞくしていた。
「しかし、ただ走るだけも
「木登り、ですか?」
山道を登りきったところに、短い参道があった。
奥には周囲を
大樹は横に大きく広がっていて、木そのものの高さは十メートル弱くらいだろうか。
憑きものは桜の木を指さした。
「うむ。どちらが早くあの木のてっぺんに登れるか勝負だ」
思いのほか高さがあるのを見て、俺は
「でも俺、木登りなんてやったことがなくて」
「では勝負ありだな。少年はもらう」
憑きものが勝ち
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます