#5 霊怪妖神(れいかいようじん)、参道に至る
「おい転校生」
タクシーの助手席から景色を見ていると、後ろから
振り返ると、強い視線に射すくめられる。
卜部の
霊視されている、と俺は思った。
「君の存在感、人間にしてはどこかおかしいな。あやふやで
ごまかしきれないと思い、素直に本当の事を話すことにした。
「ああ。俺は
「ふーん、そうなんだ。てっきり、みーちゃんの
みーちゃん? ああ、美月さんのことか。
それで、『みーちゃんの婿養子候補』?
「いやいやいや!」
「違います違います!」
すかさず否定する俺と美月さんを
「本当に?
俺の肩に乗ったつづらが、巴の方に首を伸ばした。
「ナツキはボクが
「ああ、なるほど。ただの転校生じゃなくて、
卜部はたいして驚きもしない様子で
タクシーから降りると、目の前には小高い山があった。
山頂までは赤い
そのたびに美月さんの
美月さんが先頭に立ち、黒髪にかかる桜の花びらを振り払いながら石段を登っていく。
続いて卜部、最後に俺の順番で歩いていく。
左手に弁当、右手にトランクを持ってこの傾斜のきつい石段を上るのは中々にハードだ。
けれど、山頂に広がる景色やこの後の花見を想像するだけで、なんだか胸が
さて、どれくらい登っただろうか。段々息が切れてくる。
石段が尽き、いよいよ山道に入った。
「……あれ」
両隣の
誰も何もしていないのに、ひとりでに。
鳥肌が立った。
「まさか、
「普段は無人とはいえ、ちゃんとお
「まずいな。山の気が濃くなってきた。『
卜部が印を結び、まじないの言葉を唱え始める。
薄い紫色を帯びた
しかし、その声色が途中で変わった。
それは、ぞっとするような穏やかならぬ声。
巴が俺達を
「ふふ、ふふふふ。神の山と油断したか。そんな
「あはは、あはは」
卜部が腕を水平に伸ばすと、服が鮮やかな赤い
「この体、私がもらい受けたぞ」
「やばい。卜部が
「ど、どうしましょう」
俺は右手につづらの
右手がきらきらと神秘的な白い光を
いちかばちか、
「
美月さんが俺を制した。
「でも美月さん。このままじゃ卜部が」
「
「そんな時はどうしたら?」
「
「ミヅキの言う通りだよ。
どうしよう。どうすれば卜部を助けられる?
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