#5 不幸な高校生、月姫神社の居候になる
「──それで、帰れなくなったと」
老宮司が
美月さんと、着物姿の
「ここが、君が今おる
老宮司が地図の上の鳥居の記号を指さした。
近くには市町村名の表記もある。
──
確かに住宅地図に表示されている地名は俺の住んでいる地域のものだが、神社の周りに建っている
周囲には
地形も俺の住んでいる町と同じ。ただこの地図だと、開発があまりなされていない様子だ。
となると、昭和あたりにタイムスリップしてしまったのだろうか。
「ここが青桐町なら、この近くに俺の通っている
「普賢高校? この辺りは田舎じゃから、高校は県立の
老宮司の言葉にショックを受けつつ、周辺を地図で確認するが、『
老宮司と美月さん、そして奥さんが心配そうに顔を見合わせている。
「おじいちゃん」
「ああ」
老宮司が言った。
「君、落ち着いて聞いてくれるかね。ここには、ごく
「常世人?」
意味が分からずに困っていると、老宮司が文机の上の和紙に『
「うむ。君のいた世界が『
「
「──常世と現世の行き来は、そう簡単にできるものではない」
「どれくらい難しいことなんですか」
思わず身を乗り出す俺。老宮司は静かに言った。
「
──俺は
これは、これまでの人生史上最悪の出来事。
そうすれば、元の世界へ帰れなくなることもなかった。
「
もう泣きたい気持ちで胸がいっぱいだ。老宮司が俺の肩にそっと手を置いた。
「そう
「一体どうすればいいんですか? 俺、戻れるためならどんな事でもします」
「
「それはどういう……」
「誰かの助けになるような
美月さんが
しかし今は頭がパニックになっていて、話の内容の深いところまでは頭に入ってこない。
「先ほど君は、
顔を上げると、老宮司の誠実そうな瞳がそこにあった。
「
「でも……」
「何なら常世に戻れるまでの間、しばらくここに住んでもいい。こちらは妻の
「
老婦人が柔らかな笑みを浮かべた。うぐいす色の上品な着物がよく似合っている。
「
美月さんが畳に手をついて頭を下げた。
年齢は俺と近いような気がするが、神社の娘だけあって、礼儀正しく作法が美しい。
見ず知らずのご一家に
「
深々と頭を下げると、つづらがちょこんと膝に乗り、真剣な表情で俺を見上げた。
「キミが必ず常世に帰れるようにボクも頑張るから」
──ああ、何という
皆の優しさに、思わず涙が出そうになった。
こうして俺は、当面の間、
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