第5章 卜部巴を護りしは
#1 月姫神社、皐月(さつき)
その日、俺は学校から帰ると、白蛇のつづらを肩に乗せて
天然の石をくり抜いた
五月上旬とはいえ、日陰はまだ肌寒く、水も冷たい。
「うう、冷たい」
「ナツキ。こういう
「はい……」
つづらに励まされつつ、手水鉢の下の
枯れ葉の集まったところに、黒く
これが『
「遅いなぁ、まだ時間がかかっているのか」
手水舎の柱に寄りかかった
「せっかくこの僕が
「うるさいな。そう思うなら手伝えよ」
とは言え、将棋の手合わせを頼んだ覚えは一切なく、いつの間にか俺からお願いしたことになっていた。
しかも、将棋はこいつの得意分野らしいから、嬉々として俺を打ち負かしてくるに違いない。ちょっと
「大体なぁ、お前、
「しょうがないでしょ。
この
「こんにちは。
「すみません。あいにく
「あら、そうなの。うちのお嫁さんに赤ちゃんが生まれてね。お宮参りの予約をしたいのだけど」
「それはおめでとうございます。お宮参りですね。少々お待ちください」
俺は
慣れないながらも予約の受付をしていると、隣で巴がにやけながらこっちを見ている。
見ていないで手伝えと言いたい。
風祭さんが帰ると、社務所の奥から
「そろそろ
⛩⛩⛩
盆にはほうじ茶と、ガラスの皿に盛られた
「
「いえいえ。みーちゃんこそ、毎日学校終わってから家の仕事だから大変だよね」
巴がにこにこしている。
「おい。お前は何にもしてないだろ」
「してるよ。夏輝くんがサボっていないかの
「……」
案の定、めっぽう強い。
しかも、いやらしい
「夏輝の
「
「ふっふっふ、
「その
「はい。銀に続いて金ももらった」
「ちっ」
「夏輝くーん、ほらほらぁ。王様の周囲にすきま風が吹いてるよぉ」
「……」
とにかくはしゃいで
「はい王手」
「何でこいつにここまで
俺はがっくりと肩を落とした。ああ、何という不幸。
「まあまあ」
美月さんが隣で困ったような笑顔を見せる。つづらも呆れた様子で長い首を振った。
「さあて。将棋の
今までのサディスティックな攻めぶりを、
「お前、食べた
「あはは。将棋の
「この
片手を上げて去っていく巴だった。
表紙
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330650645720255
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