#5 宙を舞う帯たち
──数か月ぶりに再会した白川ゆりあ。
肩まであった明るい栗色の髪が、ばっさりとカットされて中学校以来の丸みのあるショートボブになっていた。
それにしても、少し
丸い大きな瞳からは好奇心に
「本当に
ゆりあの隣に立っているのは、俺の
セミロングヘアの、あまり笑うことがないクール系女子。
疑うような瞳、まるで
お互いの姉同士が仲が良くて、小さい頃は
俺も雪那も本を読むのが好きだったから、本や漫画の貸し借りなんかもよくしていた。
それが、なぜか急に嫌われてしまった。
「私は夏くんなんか好きじゃないんだから! 一緒にいると不幸が移るし!」
小学校の頃、雪那がクラスの奴にそう言っているのをたまたま聞いてしまって、彼女を大切な友達だと思っていた俺は嫌われているんだと深く傷ついた。
そして俺は彼女のきつい言い方や勝ち気な態度に段々と
──それにしても、この二人はそんなに仲が良かったか?
ゆりあと
俺が
常世では、
タイミングの悪い事に、いま俺の隣には美月さんがいる。
「い、いや! あの、これは……」
たじろぐ俺を、ゆりあがきっと
ふられた時のトラウマがよみがえり、
──きつい言葉が飛んで来るかと思いきや。
ゆりあが頭を深く下げた。
「──ごめん。ごめんね……。ひどいことを言って、本当にごめんなさい!」
その瞳からこぼれ落ちるのは、大粒の涙。
「あれから瀬戸くんがいなくなって、私のせいだと思って。彼女いるのに誘ったりして、バカだった」
「いや。俺の方こそごめん。あの時きちんと事情を話したかったのにうまく言葉が出てこなくて……」
──今こそ真実を伝えなければ。
あれは
「……その制服は? 今はどうしているの?」
「少し事情があって一時的に別の学校に通学してて」
「じゃあどうして
俺を
「い、今は時間がないから後でゆっくり話すよ」
「とにかく瀬戸くんが無事で良かったよ。その可愛い蛇さんは?」
涙を拭き終えたゆりあがハンカチを
「この蛇は俺の友達というか守り神みたいなもので……」
「そうなんだ。瀬戸くんってなんか不思議」
雪那が美月さんをきっと
「──夏くん。ところでその子、一体誰よ?」
「もしかしてあなたが、
いきなり直球をぶん投げるゆりあ。
「……わっ、私ですか?」
動揺しはじめる美月さん。
目の前の女子三人の間に、
──まずい。
今ここできちんと言わないと、俺の恋愛トラブルが美月さんにまで
「違う!」
美月さんが言葉を発する前に、俺は叫んだ。
「
「でも聞いたんだよ。瀬戸くんが
ゆりあが眉をひそめる。
「その情報は間違ってる。俺はうちの
「……え? そうなの? でも、『いちゃついてた』って言う話だよ?」
鳩が
「『引きずり回されてた』の間違いだよ。うちの姉はレスリングのインカレ選手だ。この地上で
美月さんの肩の上のつづらの顔には「あーあ、キミも気の毒だね」と書いてある。
同情をありがとう。
「白川さんはその話、そこにいる
「……私は何も知らない!」
「夏輝くん! 後ろから
振り返ると、色とりどりの
──
慌てて右手から
「しまっ……!」
すぐさま
「これ、着物の帯……かな?」
「何よこれ? 夏くん、今一体何をしたのよ?」
アスファルトの上に散らばった帯の断片を見て、怪訝な表情をするゆりあと
その瞬間、ばらばらになった帯がすぐさま繋がり、形状が
気づくと、再び帯に身を
もう一度神力を全身に流そうと力を込めると、帯の物の怪が予想外の行動に出た。
まず、背中に、ちくりとした痛みの感覚があった。
何かが注入され、全身が
──
「
美月さんの声がした後、俺の顔に
「ぐあっ!」
痛い。
──切幣は、細かく切った和紙と
「美月さん……俺の顔に思いっきり切幣ぶち
「安心してください! 今、祓いますからっ……!」
「ぎゃっ!」
再び俺の顔めがけてばら
ダメだ……美月さん俺の話聞いてないや……。
このままでは、物の怪にやられる前に美月さんにやられてしまう。
「ちょっとあんた! さっきから夏くんに何してんのよ!」
美月さんが俺を呼ぶ声と雪那のキンキン声が、次第に遠のいていく。
──
早く
俺は必死に
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330661828866738
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