#2 不幸な高校生、復讐の鬼と化す
カナカナカナカナ……と
ベンチに腰かけた制服姿の俺と美月さんの周りを白魂が一匹、ミーミーと鳴きながら
少し離れたところでは、
先程の出来事が尾を引いているのだろう、
「そもそも、どうして
「昔はこの
「ユアサはネチネチ
つづらの言葉から、幽浅が手下に指示して、美月さんを女子グループの輪から外したのだろうと言う事を何となく
「……なんか俺、さらに腹が立ってきた」
こぶしを握って立ち上がると、積んであった
「くくく……これで
「ああっ、
「あのさぁ、
「……確かにそうだな。この
つづらの言葉に我に返った俺は、
「首を洗って待ってろよ……」
⛩⛩⛩
境内を吹き抜ける初夏の風を浴びながら、美月さんが長い髪をなびかせてシャトルを打ち返す。
「うまいよ美月さん! その調子だ」
頭上を飛んでくるシャトルをジャンプして捕らえては、美月さんの取れそうな範囲を
「いえ! 夏輝くんの方こそ、すごく上手で驚きました!」
足を踏み出してラケットを低く構え、またも打ち返す美月さん。
前回に続き、
ギリギリまで待って、再び
「俺! 昔から姉貴の練習台にさせられてたから!」
「そうなんですか! それは良いお姉さんで!」
美月さんがラケットを
「いや! うちの
打ち返すたびに嬉しそうに笑う美月さんを見て、いつの間にか自分も気分が
「
「やば! 美月さんゴメン!」
うっかり
慌てて追いかける俺達。
シャトルが飛んでいった先には、月姫神社の裏山へと続く小さな
──鳥居をくぐった瞬間、高い金属音のような耳鳴りがして全身に
聞こえてくるのは、カナカナカナカナ……と鳴く、
七月だと言うのに不自然に冷たい風が吹き、木々の
──そこにそびえていたのは、高さ十数メートルはあろうかと思われる黒い巨岩だった。
上部を苔と草で
長年風雪にさらされてきたその表面は細かな穴が
そして、岩の正面には、巨大な
「何だ……これは?」
ただならぬ気配を放つ巨大な黒岩に
「『
──美月さんの言葉に、まるで
気の遠くなるような長い時間の中で、この岩の上空をぐるぐると回り続ける何千何億もの星の映像が見えるかのようだった。
「──もしかして、月姫と日彦が古事記や日本書紀に登場しないのは、宇宙から来た神様だからってこと……?」
「はい。他の
「でも、
「古来、別の世界から来た存在を、幸せをもたらす『
そう言った後、美月さんが黙った。
「……早くシャトルを探さなくては」
「いや最後まで言ってよ! 俺が幸せをもたらす来訪神だって!」
俺の問いに目を逸らす美月さん。
シャトルを拾うと、俺の方を振り返ってくすくすと笑った。
どうも、からかわれていたらしい。
──恋。
生きる喜びを与えてくれる薬であると同時に、俺を苦しめる毒でもあるこの感情。
彼女の俺に対する想いを知りたいが、また一方で真実を知るのが怖い。
「四時ですね。そろそろ社務の時間です。とにかく戻りましょう」
──知らなかった。今のは時報だったのか。
美月さんに続き、ラケットを抱えたまま裏鳥居をくぐると、目の前には一面を人工芝に覆われた巨大な広場があった。
まばらに植えられた木、人工池と噴水。
少し離れた所には、白いコンクリートとガラスで出来た巨大な建造物があり、家族連れやカップル、学生のグループなんかが行き来している。
──
俺と白川ゆりあがデートする予定だった場所。
「こ、ここは一体?」
うろたえた様子で辺りを見回している美月さんに、俺は言った。
「……俺達、
イラスト
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