#10 夏越(なごし)の祓(はらえ)
──いよいよ、
俺は手伝いに来てくれた巴(ともえ)と一緒に朝早くから社務所で参拝者対応のための準備をしていた。
ふいに
「おっ、美月ちゃんは今日も
隣にいた
いつもの美月さんもいいけれど、祭礼の日の美月さんは凛として
「いえいえ、そんな。恥ずかしいです。夏輝くん、巴くん。例の
段ボールを開封し、そっと
みんなで苦労して
「こんにちは」
小さな女の子二人を連れたお母さんだ。
「本日はお
根付を三つお渡しすると、女の子達がへびさんかわいいー、とはしゃいだ。
お母さんもとても喜んでくれて、何度も頭を下げられて、なんだかとても温かい気持ちになった。
一時間後、既に社務所は人で混雑する状況になっていた。氏子さん達も一緒に対応してくれているが、行列を
御守りのモデルであるつづらも、社務所の前に置かれた赤い座布団に
⛩⛩⛩
一時間後、子ども達に
「大丈夫か、つづら?」
「もうやだ。怖いよ。小さい子がボクの首をつかんだり、
「つづらは奥で休んでいてくれ」
俺がつづらを座布団ごと社務所の中へ引き入れていた時、氏子の
「美月ちゃん達。先日のお
社務所に並ぶ行列の中に
「お疲れ様、やっほー。御守りはどうなったのー?」
「有難う。お
「それは良かった。
「あーそうだよ。夏輝とみーちゃんがどうしてもって言うから、仕方なくね。なんなら、般若と村椿も働いていかない? 僕が優しく教えてあげるよ」
あやしげな笑みを浮かべる巴に、般若さんがぴしゃりと返す。
「こき使われそうだから
「巴の場合は、三回くぐるだけじゃ穢れが落ちないだろうな」
「夏輝までそれ言うか?」
巴が口をとがらせると、女子三人がくすくすと笑った。
氏子さん達と立てた
村椿さんと般若さんが笑顔で手を振って帰っていった後、
「先日はありがとう。あなた方がいなければ
「いえ」
「今回の件を踏まえて、虫送りの廃止は役員会でいったん見送りになったんですよ。月姫神社の除蝗祭と共同開催する話も出ている。今後も町内会でやり方やあるべき姿について話し合っていくことになりそうです」
確かに共同開催という形ならば、
「若い世代と高齢者世代が本音でぶつかり合うことで色々な
一礼して立ち去ろうとする作道さんに、美月さんが白魂根付を渡す。
「あの。こちらをお持ちください」
「ありがとう、例の白魂御守りですね。とてもよく出来ている」
作道さんが笑顔になり、深い
思い出すのは、山の向こうに消えていったアオサギ達の青い炎。
世話になった彼らの居場所を奪ってしまった罪悪感に
「
「そうそう。あいつらは今頃、
顔を上げると、そこにはいつもと同じ美月さんと巴の顔があって、俺は少しだけ安心した。
「そうだといいな。魚が
今日は六月三十日、一年で一番昼間が長い
見上げた青い空は高く
このまま、どこまでも
心の中の
⛩⛩⛩
■第6章、完結です。最後までお読みいただきありがとうございました!
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