#6 雷公(らいこう)の加護
「次は本気で行くぞ!」
怒りを増す悪王子の鬼気迫る
悪王子の
俺も
「夏輝、下がってろ!」
「ははっ、もらったぞ」
巴の二重結界を破り、つづらの神力の障壁も突き破って雷が落ち、俺を直撃する。
──間に合わなかった。目の前が、真っ白になった。
「痛ってぇ……」
後ろに倒れ、尻餅をつく俺。周辺の土が、ぶすぶすと
「人間ふぜいが、神雷を食らって
ピンピンしている俺の姿を見て、言葉を失う悪王子。
「どうしてだと思います?」
そう言いながら俺は、着ている
俺の
「
「ええ。
神雷を受けて
──天満宮に
平安時代の学者であり、
『
道真の死後、
以来、道真は
俺達はヒルメ様の
そして今、
悪王子の
「
一瞬びくりと身を振るわせ、動きを止めた宿禰さんが、ごほんと咳ばらいをした。
「──年を取ると、耳が遠くなっていけませんのぉ」
再開される祝詞奏上、胸をなでおろす俺と巴。
「宮司! この悪王子社の祭神はオレだ! その命令を無視しようとは何事か!」
ゴホゴホと
この間まで悪王子に頭の上がらなかった宿禰さんの、現在のスルー力たるや。
空に垂れ込める雨雲が、厚みを増してゆく。
白い
低い雷鳴と、うなる風の音。
もう少しだ、もう少しで雨が降る。
我を忘れて逆上する様子の悪王子とは反対に、次第に落ち着いていく俺の心。
悪王子が力を増幅させ、神雷を落とす準備態勢に入る。
「夏輝。これさえ
悪王子に視線をやったまま、巴が押し殺した低い声で言う。
「ああ、ラスト一本だ。頼んだぞ、巴」
慣れてきたのだろう、術の発動が速い。
「
五度目の神雷を、悪王子が
強さを増した雷が、巴の二重結界を引き裂いて俺とつづらに直撃する。
「ナツキ。今だよ!」
「ああ」
右手を高くかざし、溜めていた
つづらの神力が悪王子の元へと
神雷が、俺から大きく
「バカな」
その額からひとすじの血が流れ、その頬を伝って落ちた。
悪王子が額を拭い、その手に付着した血を見て、声を震わせる。
「おのれ
周辺の空気を揺るがすような、怒気のこもった声。
俺を
俺は、神力の放出で乱れた呼吸を整える。
悪王子の美しい顔が
その身に
思わずぞくりと背中が粟立つような、湿り気を帯びた殺気。
「──口で言っても分からんなら、
その涼やかな美しい瞳が、黄金色の蛇の目に変わった。
ざわざわ、ざわざわと青い狩衣姿の全身が揺れたかと思うと、人から大蛇の姿へと変化する。
「おい
えーと、と目を宙に泳がせる巴。
「トモエ。神雷を五回耐えれば大丈夫って言ってなかったかい?」
「いやーつづら様。完全に僕の計算ミスです。悪王子さまが
巴が頭を掻いた。
──ここへ来て、いきなりの戦局不利か。
あともう少しで雨も降りそうなのに。
イラスト
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330656181456133
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