#10 雨乞いの終わりに
⛩⛩⛩
夕食時の
普段は神道の決まりに基づき、普段は食事中喋らないことになっているが、今日は例外だ。
食卓に並ぶのは、アサリの炊き込みご飯とキュウリとイカの酢の物、オクラやレンコン、
涼やかなガラスの小皿には、デザートの
透き通ったガラスの盃になみなみと注がれた冷酒を、
「俺、よく分からなくなってきたんですけど、そもそも悪王子さまって何の神様なんですか?」
「強大な力を持つ
──
日本の国を生み出した
「じゃあ悪王子の
「
俺はスマホを操作して、ヒルメ様の社の前にあった
――石碑には、「■■孁社」の文字が刻まれている。
「『
俺の隣で美月さんが言った。あまりに
「だけど
俺の向かいで、巴が言った。
「
宿禰さんの盃が空になったことに気づいて、俺は
ありがとう、と述べて再び盃を傾ける宿禰さん。
「──そう言えばおじいちゃん。『悪王子神を
「なに?」
美月さんの言葉に宿禰さんがぐいと酒を飲み干し、眉をひそめた。
「私は、
千鶴子さんの言葉に、宿禰さんが空になった盃を、どんとテーブルに置いた。
「一体誰がそんなことを!」
「僕は
巴がガラスの皿の上の
「いや、行基だけ今出てきた
「違う! 違う違う違―う! 悪王子さまご本人が認めたのは、
宿禰さんが顔を真っ赤にして立ち上がり、ろれつの回らない声で
つづらが呆れ顔になった。
「スクネ。いくら怒ったって、今からいちいち訂正して回るなんて無理だから
賑やかな時間はとにかく楽しくて、あっという間に過ぎ去っていった。
皆の言葉に
──今はただ彼女のそばにいられれば、それだけで
⛩⛩⛩
次の日。降りしきる雨の中、俺と美月さんは傘をさして下校してきた。
並んで大鳥居をくぐり、静かに雨に濡れる
俺の肩の上では、つづらがあくびをしている。
「ただいまー」
参道右側にある住居の玄関の戸を勢いよく引いて、家に入る。
ローファーを脱いだ美月さんが第六感で何か察したらしく、
「……何か嫌な予感がします」
「ナツキ、ミヅキ。まずいよ。この気配は」
つづらが身を固くして震え上がった。
⛩⛩⛩
茶の間のふすまを開けると、そこには昼ドラを見ながら酒を片手にくつろいでいる悪王子の姿があった。
「あ、
「
「いや、俺の名前は青二才じゃなくて
「──そうだったか?」
「いや名乗りましたよねあの時! 戦いの後に互いを認め合った感動的な瞬間がありましたよね!」
「……
悪気のなさそうな悪王子の態度。
あの時の熱い気持ちを返してほしいと俺は心から思った。
「それよりも、奥さんたちに会いに行かれたんじゃないんですか?」
「ああ、行ってきたぞ。皆、元気で変わらず
ちょうど茶の間に入ってきた
「オレの妻になれ。そなたに一生涯の幸せを約束しよう。花が好きなら、オレが手ずから育ててやってもよい」
「い、いえ……
度重なるプロポーズに美月さんが真っ青な顔で後ろに下がり、代わりに俺と
「お願いですからお帰りくださいっ!」
「――ニュースの時間です。気象台から××地方が
──テレビから流れてきたのは、遅い梅雨入りのニュースだった。
■■■
【夏輝言うところの悪王子討伐メンバーの皆様】
※
※
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⛩⛩⛩
イラスト
雨降り夏輝
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330657205251885
雨降り美月
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330657205393340
■第7章、完結です。最後までお読みいただきありがとうございました!
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