#3 権現様、うれたし
それにしても現世は、俺のいた常世よりも人間関係の
スマホがないからどうやって面白い話題や情報を拾ってきたらいいのか不安だったが、みんな近場にあるスポットや
情報の流れが遅いせいか、ここは時間の流れがゆっくりしていると俺は思った。
俺の学校初日はあっという間に過ぎ、放課後になった。
部活動に励む生徒たちを横目に、俺と
大きく伸びをする。
「ああ、ちょっと気疲れしたぁ」
「ですね。最近クラス替えがあったばかりだから、実は私もまだクラスにあまり馴染めていなくて」
「でも美月さん、今日は
「ふふ、そうですね」
迷路のように入り組んだ路地を歩く。リュックからつづらが顔を出した。
「ふわあ。よく寝たよ」
「つづら、起きたか。退屈させてごめん」
「いいよ。ボク、昼寝が好きだからどれだけでも寝ていられるし。ところで、学校は楽しかったかい」
「うん。
「そうですね。でも、巴くんの場合は色々と事情がありまして」
美月さんが言葉を
式神が代理登校しなければならない事情とは一体何だろうか。
角を曲がった時、
「卜部。今日はうるさくしてごめん」
声をかけると、
しまった、声をかけたまでは良かったものの、話題がないのに気づいた。
「あのさ。卜部って、
「
「そうなのか。俺、陰陽師の出てくる小説を読んでかっこいいなと思っててさ。俺も式神とやらを一回使ってみたいんだけど……やり方教えてくれない?」
自分でも思っていなかった言葉が出た。
「は?」
卜部が
「今日会ったばかりの
足早に歩いて行こうとする卜部を追いかける。
「テーマパークの
「式神は誰にでも
「いや、卜部だって式神を
卜部が
⛩⛩⛩
民家の竹垣の下に小学生が三人集まって野良猫を
つややかな毛並みの野良猫が一匹、日向ぼっこしているのが見えた。毛ふわふわー、やわらかーいと声が聞こえてくる。
すばやく近づいて、小学生達と一緒に猫を
「
「じゃあ少しだけ」
俺もおそるおそる撫でてみる。つややかな背中の毛の奥から体温が伝わってくる。
毛の生えている動物に触ると、こんなに
「巴くんも
美月さんが言うと、そっちのお兄ちゃんは撫でないのー、と黒いランドセルの男の子が
「あいにく、僕は何も感じられないんだよ」
「体が
どこか淋しそうな横顔に、常世にいた時の自分が重なるような気がするというか。
ふと見ると、猫の尻尾が二本に増えている。
見間違いかと思い目を凝らすが、やはり二本。
「こ、この猫、尻尾が二本になってる!
小学生と話していた美月さんと卜部が振り返る間に、猫の尻尾が元に戻った。
「何言ってるんだ
卜部が言った。
「いや。だって今見えたし!」
「ナツキ、転校初日でちょっと疲れてるんだよ。ねえミヅキ」
「はい。普通の猫ちゃんだと思います」
どうして皆、そんなことを言うのだろう。ひょっとすると俺がおかしいのだろうか?
猫がニャーと鳴いて、俺の横を通り過ぎる瞬間、声がした。
――
伝わってきたのは、激しい
そして、背筋がぞくっと凍るような、
あまりの
曲がり角を曲がって消えてゆく猫、また尻尾が二本に増えた。
「ほらほらほら! 二本ある! 二本!」
必死に卜部の肩を叩く俺。卜部が呆れた顔をする。
「何言ってるんだ馬鹿。そんなの誰でも知ってるよ」
「いやでも卜部、さっき『そんなわけない』って」
「あれは
美月さんがそう言うと、卜部とつづらが頷いた。
「猫又は、元は
「みんな見えてたんなら、どうして」
「下手に手を出したら子ども達に危害が及ぶかも知れないから、ミヅキもトモエもあえて
つづらの言葉に、思わずはっとする。
やり過ごすことも大事なのか。
「どういう意味なんだろう。『
「富士権現様の事が
「いや全く分かりません。
卜部が「はぁ、全然ダメ。こいつ顔だけで全っ然使えないわ」とあきれ顔で首を横に振った。
「もう。巴くん、そんなことを言っちゃだめですよ」
「いやだってさ、神社に住んでるのに
「いえ、夏輝くんは事情があって」
「事情も何もないよ。
卜部に
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