#1 災いは、天から舞い降りる
※日頃の読者の皆様に感謝を込めて、クリスマスに執筆した特別編になります。
⛩⛩⛩
時すでに
俺が
寒風吹きすさぶ
既に高校は冬休みに入っている。
数日の登校日を除いては、自由の身となったわけだ。
桃色のロングコートに白いマフラーを巻いて、モコモコに着ぶくれた美月さんを可愛いと思いつつ、俺は横目でちらちらと見ていた。
変温動物のつづらは、うっかりすると冬眠モードに入ってしまうので、俺の服の中で温まりながら顔だけ出している。
往来する人の合間を小さな
「ところでさ。年末になって、
俺が言うと、美月さんが手袋をはめた両手に白い息を吹きかけた。
「そうですね。この時期は多いです。ですが、
美月さんがふいに上空を指さした。
空に現れた赤黒くうねる大きな炎の塊が、燃える
「分かった」
俺は人差し指で赤い炎に狙いを定め、神力を撃った。
指から放った白く輝く光が流星のように流れ、
「今のあれは一体何?」
「あれは『
「そうなんだ。何だか不気味だね」
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商店街のあちこちにはクリスマスツリーが飾られ、点灯するイルミネーションが冬の街を華やかに彩っている。
「世の中はクリスマスイブですが、うちは神社なのでイベントが何もなくてすみません」
美月さんが申し訳なさそうに言った。
「いや。ケーキぐらいなら食べてもいいと
千鶴子さんから預かったお金で、今日はケーキを買って帰る予定なのだ。
「つづらと美月さんは、どんな味のケーキがいい? チョコとか、王道の生クリームとか」
「ボクは、ひりつくような
「チョコも捨てがたいですが、やはり一番はあんこでしょうか」
「ナツキこそ、どんなケーキがいいのかい?」
「一般的な味なら何でも」
少なくとも、焼酎とあんこ以外の味でお願いしたいと思う。
突如、美月さんが上空を指さして叫んだ。
「夏輝くん、また天火が」
「ホントだ」
銀色の空から、赤黒い天火が次々と落ちてくる。数は十ほどか。
しかもなぜか、俺めがけて。
「ちょっと待て。なんでこっちに降ってくるんだ!」
シューティングゲームの如く次々神力を撃って祓うも、空からきりなく現れる天火。
「こればっかりは体質だね。ナツキ、そういうの引き寄せちゃうから」
「そうですね……」
つづらと美月さんが首を左右に振ってため息をついた。
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その後俺達は、雑貨屋と本屋に寄って各自見たいものを見て回ってから、洋菓子店でフルーツケーキを入手した。
ふと前を見やると、モスグリーンのコートを着た陰陽師、
「巴」
やあ、と片手をあげかけた巴に駆け寄ると、俺は左手に提げていた買い物袋から紙包みを出して渡した。
「ちょうど良かった。はい、クリスマスプレゼント」
「え。僕にか?」
意表を突かれた様子の巴が紙包みを開く。
中に入っているのは、『人類の進化』というタイトルの専門書。
「巴、ネアンデルタール人とか好きだったよな」
「すまない。僕はどっちかっていうとネアンデルタールというよりクロマニョン派なんだ」
何が違うのか俺にはよく分からない。
というかむしろ、今までその両者を同じだと思っていた。
「安心しろ。どっちも掲載されてるから。何なら北京原人も出てる」
「──本当にいいのか? あの北京原人だよ?」
一瞬顔を輝かせていた巴だったが、我に返った様子ですぐに本を引っ込めて顔をそむけた。
「だが、勘違いするな。君に借りはつくらないぞ」
「巴にはいつも世話になってるから。俺がお前にプレゼントしたいんだよ」
「一応はありがとう。嬉しくなくもないと言う事もなくはない、とだけ言っておこう」
相変わらずな巴の様子に、つづらと美月さんが苦笑している。
「それにしても、神社に住んでいる君達がクリスマス如きではしゃぐとは
俺達を注意する巴の左手には、クリスマスケーキのチラシが握られていた。
「ケーキのチラシ持ってる陰陽師がそれ言うかよ普通」
「でも、そう言われてみれば。クリスマスもハロウィンもすっかり季節の風物詩として定着してますね」
「おおらかというか、いい加減なんだよ。この国の人間たちは」
「この勢いならそのうちサンタクロースも
俺の言葉に全員が
寒い風が吹きつけてくる混みあう街の中で、ひとしきり立ち話した後に巴と別れた。
イラスト
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330657564198238
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