#5 不吉な幕開け
結局、新しい御守りについてはいい案が出ないまま、
俺とつづらは、
つづらを肩に乗せ、俺は
そして、月姫神社の
太鼓を鳴らしながら、竹を割って
最後にはその松明を、青桐町の公民館前で燃やし、公民館で
そういう流れらしい。
午後六時、松明の引き回し前に
そして俺は、忙しい宿禰さんについて回る形となる。
「夏輝くんや。今年はアシスタントがいてくれて助かるよ」
「いえ。俺も楽しみにしているんで。
玉串とは、
「ああ。車の後ろの一番下に積んでおくれ」
空の向こう側から、夏がやって来る気配がする。
参拝者が増えてきたので、
「
声がして振り返ると、
「蓬莱さん、すごく
「可愛いじゃん。
「いえいえ、そんな! でも、有難うございます」
真っ赤になった美月さんが両手を振って
「後ろも見せてー。わぁ、
美月さんと村椿琴梨が話している間に、般若あかりが参道の『
『
「『
腕組みをしながら説明看板と茅の輪を交互に
「神社によっては、唱える和歌が三種類ある所もあるそうです」
「えー、絶対覚えられないじゃん」
女子三人の話は尽きない様子だが、時間が迫ってきていたので「俺、そろそろ虫送りに行くから」と一声かけた。
「瀬戸くんも
「ホント、イケメンは何着ても絵になるから羨ましいわ」
「ありがとう」
女子三人に手を振り返し、宿禰さんのワゴン車に乗った。
公民館には既に人が集まっていた。
広場中央には大きな
松明の前にいた
宿禰さんが軽く打合せをしている間に、俺は
宿禰さんが
次は、作道さんを先頭に、参加者の中から代表の何人かが
玉串の扱い方を知らない人が多いので、俺が玉串を渡しながら小声でレクチャーをする。
宿禰さんの斎主挨拶で神事が終わった、その時だった。
「じーちゃん、大変だ」
宿禰さんの表情が険しいものになる。
「強い
不吉な予感に遠くを見やると、山すそに広がる田んぼの一面が、赤黒い
「大量のイナゴですと? 数日前に
「
ざわつきはじめた高齢者たちが、作道町内会長を取り囲む。
「会長。だからわしらは虫送りの
「虫送りの重要性を理解しちゃいない若い人の意見なんか聞くから」
町の代表というだけで、たった一人に集中してゆく
うつむいて唇を
「申し訳ありません。しかし、若い人たちも含めて全体の
とても見ていられなかった。好き放題発言して、あまりにも勝手すぎる。
その時だった。
「お静かにっ!」
辺りがしんと静まった。
「わしら
がっちりした体型、口数が少なく鋭い目つきの比田さんの迫力に、ただただ気おされる住民たち。
今までは怖いと思っていた比田さんを、これほど頼もしく感じたことはない。
「比田さんの言う通りじゃ。とにかく今は、イナゴの
宿禰さんの声に、高齢者たちが少し落ち着きを取り戻したように見えた。
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