#8 眷属神
住宅街の中に
鳥居の隣の『
「──
俺の肩からつづらが飛び降りて、石段を這いのぼりつつ言う。
「
──まさか小さい頃に縁日で何度も訪れていたこの神社が、
つづらに続いて鳥居をくぐると、
手入れの行き届いた月姫神社との
美月さんが悲しげに周囲を見回した。
「
──ふと、背後から不穏な気配を感じた。
「──
美月さん目がけて、飛びついてくる何か。
「きゃあ!」
美月さんの身体に巻きついているのは、金色の蛇。
ベースの部分は白蛇なのだが、所々に金箔のような金色の
あまりの身のこなしの早さに
「──
「おお……
金蛇が、美月さんの胸に頭を
「んっ……! やめてください……!」
「何だこいつ! 美月さんから離れろこの化け物!」
俺は前に飛び出すと、右手から神力を撃つべく構えた。
「お前、神力使いか?」
そいつはそれだけ言うと、美月さんの体から飛び降りた。
──そして驚くべきことに、俺の姿に
「夏輝くんが……二人?」
「この
俺は叫び、右手を前方に差し出すと神力をそいつ目がけて撃った。
すると奴は不敵に笑い、姿を消した。
「後ろががら
背後から声がしたかと思うと、
「──ぐっ!」
「物の怪や
──見下したかのような物言いに頭に血が上って来るのを
背後に回られないように注意しながら、もう一度神力を放つ。
すると奴が、涼しい顔で神力を俺めがけて撃ち返してきた。
──つづらの神力が、奴の神力に
「それにしても、まだまだ神力を使いこなせていない印象だな。オレならもっと上手く活用できるのにな」
「何っ……!」
驚く間もなく、そいつは不敵に笑うと空に向かって二発目の神力を放った。
上空から俺めがけて
慌てて
しかし、奴の
認めたくはないが、奴と俺との間には
──まずい。やられる。
俺の姿に
「
俺を襲う大きな神力の
「──あ、兄者?」
「……つづらか。久しぶりだな」
怖がっている様子の美月さんを後ろにかばいながら、俺は言う。
「おいスケベ妖怪! つづらの兄だか何だか知らないが名を名乗れ!」
「……口の利き方には気をつけろ。オレはこの
にのまえ? ああ、『二』の前が『一』だから、『一』と書いて『にのまえ』なのか。
「おぞましい
「何を言う。オレはつづらと義兄弟の契りを交わしているんだぞ! ……おい無視するなつづら!」
つづらが
「ところで
「ハッ、オレは日彦さまの眷属神だからな! 己を
一部複製の能力──その範囲が個人の記憶や人格まで及ぶのか、効果がいつまで持続するのかは不明だが、はっきりしているのは
──悔しい。
俺は唇を嚙みしめた。
「……時につづらよ。その乙女はオレのために連れて来てくれたのか?」
「はぁ、兄者の女好きは相変わらずだね。違うに決まってるよ。この子はミヅキ。
「何と……月姫さまの巫女とは。ミヅキちゃん、月姫神社を退職してオレにご奉仕しないか?」
突如、黄金色の光の矢が空から落ちてきた。
「おっと……くわばらくわばら」
「兄者のおいたが過ぎると、
「……」
──
呆れて言葉も出ない。
「時に、その男は何者だ? ミヅキちゃんをたぶらかそうとする
「たぶらかそうとしてたのはお前だろうが……」
「兄者。この子は
つづらがこれまでのいきさつを簡単に説明し、何やら考え込む様子で聞き入る
「……なるほどな。しかし月姫さまはどういう気まぐれでこいつに神力をお与えになったんだ? よりにもよって
「……適性がない? どういう意味だ?」
「容姿の良い奴は神力使いには向かん。恋愛の情はタチが悪く、
「いや俺モテませんよ? 今まで女の子が寄ってきたことなんてほとんど……」
「そんなはずはないだろう」
「む……! これは、百年に一度見られるか見られないかの
「それ、前にも言われたけど本当なのか……」
ショックを受けている俺には構わない様子で、続けて
「お前と一緒になる女はもれなく不幸になる。女が寄ってこない原因はそれだ!」
イラスト
https://kakuyomu.jp/users/fullmoonkaguya/news/16817330663375912425
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