#5 蝶の刺繡の守り袋
薄紫色の輝く糸――
つづらが
「
「たった五分か」
「ボクの
「待って、つづら。逃げるなら、
「ですが、巴くんは『広間から出るな』と言いました。巴くんが戻るまで、ここで待っていた方が良いのでは?」
「いや。このままだと、奴らが広間に入ってきてしまう。とにかく巴に事情を聞かなきゃ」
階段箪笥を途中で飛び降りて、
「巴。悪いけど入るぞ」
――そこは
かつては大家族であったであろう卜部家の姿を
祭壇の前にはたくさんの花が生けられ、まるで
──その祭壇の前に、巴が正座していた。
「ここは
「巴。
「そうか。もうそこまで来たのか」
「あれは一体なんなんだ?
「違う。ユメミサマはうちで
巴が
白木の箱は両手で抱えられるぐらいの大きさで、特段変わった気配は感じられない。
あの箱の中に、一体何が
「ごめんね。びっくりしたでしょ。今、家の中に
「呪い?」
「ああ。子どもの命を
「どうして巴くんだけが助かったんですか」
「ああ。これさ」
巴が
「この守り袋は僕の子どもの頃の晴れ着をほどいて作ってる。この
「背守り?」
「ああ。『目』というのは昔から
美月さんや宿禰さんの
「しかし、子どもの着物は
「あ! 確かに、小さい頃に着ていた晴れ着の背中に、
美月さんがぽんと手を叩いた。
「そう、それだよ。うちは呪いのせいで子どもが育たないから、母親があちこちで色々聞いてきて作った背守りが効いたんだ。お陰で僕だけが何とかここまで大きくなれたのさ。ある程度大きくなれば、いくらかは身を
「どうして、わざわざ
「
山風蠱の
「山風蠱の卦が出たら、この家の
「計算外も計算外だよ。お前の叔父さんはいつ帰ってくるんだ?」
「あいにく真夜中だ。みーちゃん、
「最初は十匹くらいでしたが、今は数十匹に増えています」
ああ、何という不幸。あまりにも状況が悪すぎる。
「そうか。それなら僕達が手に負える数じゃない。叔父貴が来るかユメミサマが目覚めるまで、何とかここでやり過ごすしかない」
巴が血の気の引いた顔で白木の箱を抱いた。
「巴。そんな
その瞬間、広間から戸の倒れる音がした。
それは、黒餓鬼たちが、結界を破って広間に
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