第17話 東の英雄


 グレルのマスターであり俺の暗殺首謀者である貿易商の男は翌日、クラウスに身柄を引き渡された。爽やかな笑みの裏で『どんな尋問をしようか』と思考を巡らせる彼に後のことは任せ、俺達は出かける準備をする。

 行先は、姫君でもある東の聖女が治める大国、『邪馬やまくに』だ。


「ライラ様、東の聖女とはお知り合いなのですか?」


「はい。とはいっても私が一方的に憧れているだけで、四聖女の会合がある度にご挨拶に伺う程度ですが……東の聖女、マヤ様は私が聖女になりたての頃からそんな私のお話に付き合ってくださる優しい方なの。私が人殺しの聖女マーダー・セイントであることも知らないから、まるで妹みたいに可愛がってくださって……素敵な方」


「へぇ……」


 うっとりと頬に手を当てるライラの様子から察するに、伝承通りの人物のようだ。

 先日モニカちゃんにもらった『神と悪魔と異界の勇者』の童話に出てくるような、心優しく美しい聖女。さすがは異邦の者が幾度となく救世を繰り返してきた世界ということもあって、童話に憧れて自身もそうなろうと志す少女が後を絶たない。

 東の聖女であるマヤは、そんな少女達の憧れと夢を理想の存在というわけだ。そして、壮大な冒険の果てに魔王を倒し、異界の英雄と結ばれた……リリスのかつての恋敵である。


 俺達は、『神に奇蹟を授かった』という彼らに話を聞くために会いに行こうとしていた。だが、それはライラの為ではなく、俺の為だ。


 『神と悪魔と異界の勇者』によると、異界の勇者は『門』をくぐって違う世界からやってきた。この数日でモニカちゃんに借りたもの以外も読み漁ってみたが、その童話のいずれにも話の途中で『門』が現れ、勇者がやってきたり神が降臨したりと、『異質な存在』を呼び寄せる力があるものだと記されている。

 この『門』に元の世界に戻る手がかりがあると考えた俺はライラと相談し、実際に話を聞きに行くことにしたのだ。


 急な謁見申請にも関わらず、聖女のよしみで快く来訪を受け入れたマヤとその伴侶である勇者。そんな彼らに会いに行くのに同行する水先案内人は――


「おはようございます。リリス」


「ふぁ……おはよ~」


 馬車に荷を詰め込む俺達の元にあらわれたのは、どう見ても朝帰り丸出しなナイトドレス姿のリリス。藤色の髪を無造作に掻き分けながら、とぼとぼと馬車に乗り込んでそのまま横になる。


「宰相くぅ~ん、添い寝してぇ~♡」


「わわっ、ダメダメっ!ダメですよっ!ユウヤは私の隣!」


 わたわたと馬車に乗り込むライラの後に続くようにして席に着くと、馬車は動き出した。今回のメンバーはこの三人。

 クラウスは街を守るのが仕事だし、グレルはというとマスターの事情聴取とドラッグの治療薬の開発に協力するという役割があった為教会に残してきたのだ。肝心のグレルの薬物依存についてはライラの献身的な菓子作りのせいか落ち着きを取り戻し、しばらくはライラの『愛情』がたっぷりこもった菓子の作り置きも保つということでこういった運びとなった。


 俺は向かいの席で眠そうにもぞつくリリスに声をかける。


「しかし……本当に良いのですか?東についてきていただいて。リリスは王宮を追放されたのでしょう?お尋ね者なのでは?」


 首を傾げると、リリスはひらひらと手を振る。


「別にいーわよぉ。追放されたのは王宮からだけだし、国に出禁ってわけでもないしね。それに、せっかく『彼』が『そんなんじゃ里帰りできなくて寂しいだろう?』って配慮してくれたのよ?なにより、自由に思った場所に行けないなんて、魔女らしくないでしょぉ?」


 そう言って胸の谷間から取り出したのは『邪馬やまくに』に入る為の入国ビザだった。俺はその辺も気になっていたので再び問いかける。


「今回僕たちはその『彼』と聖女に会いに行くのです。それが、その……」


 『気まずくはないのか?』どうにも言い淀んでいると、リリスはへらりと笑う。


「宰相君てば、そんなに他人のこと気にかけてたら疲れちゃうわよぉ?あたしのことなら大丈夫!王宮の中まではついて行けないけど、久しぶりに地元で美味しいお汁粉でも堪能するわ♡あと、東の男♡」


「にゃう!」


 『お汁粉』の一言に反応したレオンハルトが膝の上で鳴く。俺としたことが、とんだ失態だ。謹んで訂正しよう。今回のメンバーは三人と一匹。いつまでも懐っこく俺について回るレオンハルトを手放すことができず、ついつい連れてきてしまった。


 ライラが『にゃん♡にゃん♡』とか言いながら懸命に猫じゃらしを振って気を引こうとするも、全く興味を示さない。お猫様とはそういうものだ。ライラは肝に銘じておいた方がいい。俺達がお猫様と遊んでいるのではなく、お猫様が俺達と遊んでくださっているのだと。今は、猫じゃらしの気分ではないのだと。


 俺はごろごろと喉をならすレオンハルトを撫でながら続けた。


「リリスがそうおっしゃるならいいのですが。そもそも、『邪馬やまくに』とはどんな国なのかお聞きしても?」


「う~ん、そうねぇ……」


 東に向かう道中、俺達はリリスの話に耳を傾けた。


 『邪馬やまくに』は俺が来た日本と同じく和食がメインであること。服装は男性も女性も和服が多く、男性なら甚平や袴。女性なら浴衣や着物といった装いが好まれること。国内ではそれらを着ていると各種の割引サービスが受けられることなど。所謂『和』をテーマにした一種の国作りというか、経済政策を行っているのだという。

 そのせいか観光に訪れる者は年々増加し、国としての地位も盤石になりつつあるということだ。つい十数年前までは魔王が猛威を振るっていたという東の大国。しかし、異界の勇者によってソレが倒され、以降はその栄光と奇蹟を売りにして国を建て直してきたと。


(国を救えばそれだけで一国の主。以降も『勇者ビジネス』で地位・収入ともに安定……と。まったく。チート勇者様々だな……)


 そんなこともあってか、異界の勇者はたいてい誰も帰ろうとせずに悠々自適な異世界生活を満喫してこの地で一生を終えるのが童話のアフターエピソードらしい。こうして聞くと、そのフロンティアなサクセスストーリーを少し羨ましく思ってしまう。


(チートでなくてもいい。せめて俺にも何かしらの能力があれば……)


 必死に猫じゃらしを振るライラに視線を向けて思わずため息を吐いていると、青い瞳と目が合った。にぱっと返されるいい笑顔。その表情に、なんとも言えない心地になる。

 そんな俺の気持ちを誰が知ることも無く、数日に渡る旅路を終えて馬車は『邪馬やまくに』に到着した。


      ◇


「おお……ここが!」


「わぁ、すごい活気!それに、この美味しそうな匂いは何!?」


(まさに……!『お江戸』だ……!)


 国の正門をくぐると、見えてきたのは活気に溢れた街並みと、通りを行き交う人々の楽しそうな声。正面に王宮を臨む一本の大通りの脇には様々な店や家々が立ち並び、思い思いの商品や自慢の食べ物などを店先に並べている。まるでお祭りのようなその光景に、ライラも俺も思わず感嘆の声をあげた。

 馬車の中で自前の黒い浴衣に着替えたリリスは、近くで売っていた団子をさっそく購入して俺達に手渡す。


「ライラちゃん、それは『みたらし』よ?香ばしくて甘い、いい匂いがするでしょ~?」


「『みたらし』……?」


 不思議そうに首を傾げるライラの口元に、手渡された団子を持っていく。


「もちもちとして美味しいですよ?百聞は一見に如かず。まずは一口召し上がってみては?中には串が通っていますので、気を付けてくださいね。――はい」


「あー……はむっ。」


 もぐもぐ。


「……!んんん……!」


「あぁもう、お口にみたらしが……」


 宰相服のポケットからティッシュを取り出して拭いていると、リリスは浴衣を翻して去っていく。


「や~ん♡もう、見せつけてくれちゃって!じゃあ、あたしは久しぶりに会いたい人がいるからまた後でね?仲良しさんはごゆっくり~♡」


「むぐ!むぐぐぐ!」


「ライラ様?照れてるんですか?残念ですけど、何を言いたいか全くわかりませんよ?」


「んぐっ。ユウヤ、アレしましょう!こないだ教えてもらったポッキィゲーム!」


「え、ポッキィゲームをみたらし団子で?」


 ……無理だろ。持ち手側の人間が間違いなく死ぬ。


「ライラ様、イチャつきたいお気持ちはお察ししますが、みたらし団子でポッキィゲームはちょっと……」


「え~?ダメ?ちゅっちゅしましょ?」


「いや、ちゅっちゅする前にふたりとも死にますよ」


 ポッキィゲームをなんだと思っているんだ。ライラが異界のイチャつきを学びたいというから教えたが、使い方を大いに間違っている。俺はため息を吐いた。


「そんなにちゅっちゅしたいなら帰った後にフツーにしてあげますから。ほら、王宮に行きますよ?」


「は~い♡」


 放っておくと団子をのどに詰まらせそうなライラにひやひやしつつ街を練り歩き、東の聖女と英雄が待つ王宮を目指す。

 入り口で手続きを済ませ、袴姿の外交官に案内されるままに謁見の間に到着すると、吹き抜けの大広間に伝説の英雄がいた。


(あれが……)


 赤茶の髪に金の瞳。思いのほかラフな紺色の浴衣に身を包んだ青年は、俺達に気が付くと玉座から降りてきて笑顔を向ける。クラウスほどとはいかないが、中々に精悍な顔つきのイケメンだ。流石はリリスの初恋の相手。目尻から頬にかけての流れるような切り傷の痕さえも、かつての激戦を乗り越えた証として、その顔つきに華を添えていた。

 『英雄』が右手を差し出す。


「はるばる遠くからようこそ。俺がこの国で主をしている新神にいがみ晴樹はるき。気軽にハルって呼んでくれ。こっちじゃ皆そう呼ぶから。で、こっちは妻で聖女の摩耶まやだ。よろしくな、西の聖女さんとその宰相君?」


「ふふ、ライラちゃんも久しぶり?相変わらず金の髪がふわふわしてて可愛いわぁ。ウチは黒髪だから羨ましいなぁ……」


 どこか京都弁を彷彿とさせる独特な訛りの黒髪和服美人。マヤは豪勢な刺繍が施された赤い着物の袖からちょいと手を出してライラの手を握る。続いて俺も流されるようにふたりと握手した。


「お、お久しぶりですマヤ様!またお会いできて嬉しいです!ハルさんも、初めまして。お噂はかねがね……私は西で聖女をしています、ライラ・エリーシアです!」


「こちらこそ、急な謁見をお許しいただきありがとうございます。伝説のおふたりにお目にかかることができ、光栄至極に存じます。僕は宰相の如月キサラギ幽弥ユウヤ。どうぞ、よろしくお願いします」


 ぺこりと挨拶すると、面を食らったような表情を浮かべるハル。ぽりぽりと頭を掻きながら口を開く。


「うわぁ、異邦の子が来るって聞いてたからどんな子かと思ったら。随分しっかりしてるんだなぁ……俺の時とは大違いだ。でもその名前、ユウヤ君もひょっとして日本出身?」


 ……だと思ったよ。


「『……も』ということはハルキ様もそうなのですか?」


「堅苦しいなぁ!ハルでいいってば。皆英雄とか言ってわいわい騒ぐけど、俺なんてこないだ――つっても十年前くらいか?まで、只の大学生だったんだから」


「それにしては、いまだに大学生のようなお姿では……?」


 不思議に思って首を傾げると、ハルは『あはは』と爽やかに笑う。


「それがさー。マヤと一緒に神様と契約したら時間止められちゃって。歳取らないんだよ。せっかく将来はじいちゃんみたいなダンディ渋オジになろうと思ってたのに。これはこれでちょっと残念」


「…………」


 ……出たよ。チートだ。


 ついジト目を向けると、ハルはにこっと笑みを向けた。


「ひとりでこっち来て大変だっただろ?こっちはコンビニもなんも無いからなー。でもよかったよ、可愛い聖女ちゃんとうまくやってるみたいで」


「ああ、いえ……おかげさまで……?」


(うわ……何この人超フレンドリー。それに、なんか懐かしい響きが多くてつい……)


 そわそわとしてしまう。


 そう思っていると、ハルはカラカラと下駄を鳴らして俺の傍まで来てちょいと背を押す。


「こんなところで立ち話もなんだし、聖女同士で積もる話もあるだろう?てゆーか、俺はユウヤ君と久しぶりに『あっち』の話がしたいから。マヤはそっちでよろしくしてて」


「え、ハルくん?どこ行くん?」


「第二応接室~マヤ達は第一使っていいよ。なんかあったら隣にいるから呼んで?」


「あ、ちょっと。ハルくぅ~ん!?」


 ヒラヒラと手を振るハルに案内されるままに、俺はライラと別れて客間に通される。テーブルを挟んでハルの向かいのソファに腰掛けると、ハルは顔の前で手を組んでにっこりと語りかけてきた。


「――で。どう?この世界は?、どう映る?」


 表情はさっきまでと変わらないが、なんとも含みのある言い方だ。やはり伊達に修羅場をかいくぐってきた勇者ではないというわけか。俺は慎重に言葉を選びつつ口を開く。


「そうですね……」


 『チートが無ければ、生きていかれない』。そんなことをおよそチートのオンパレードであろうハルに行っても無駄なのだろう。思考していると、ハルはにかっと笑う。


「楽しい?楽しくない?嬉しかったこと、やってきて最初に困ったことは?俺はね、マヨネーズが無くて困った!」


「…………」


(俺の考えすぎか……?)


 その顔は、無邪気な子どものようだ。若干呆れながらハイテンションなハルの話に耳を傾ける。


「てゆーかさ、マヨネーズ無いのに刺身とかどうやって食え、って話!」


(……は?)


「しょうゆ……では……?」


「ええ~?皆そう言うけどさ、一回刺身にマヨつけたらもう醬油じゃ食えなくなるんだぜ?知ってた?」


(刺身にマヨネーズとか、そっちのが完全に異世界だろ!?)


「嘘でしょ。ハルさん、まさか俺とは違う日本から来たんじゃ……」


「え~?一都一道?」


「……二府四十三県」


「正解。じゃあ、メジャーなコンビニ四つ言ってみ?」


「セブン、ローソン、ファミマ……ええと、ミニストップ?」


「だろ~?絶対、一緒だって」


「…………」


 いいのか、これで?


 あまりのノリの軽さに閉口していると、ハルはソファにふかっとかけ直す。


「で?今回は俺に何を聞きに来たの?勇者に話がある~って、わざわざ馬車でここまで来るなんて。昔話を聞きに来たわけでもないんだろ?なんか困ってんの?」


 俺は、思い切って打ち明けてみることにした。だって、なんだかハルは面倒見のいいお兄さんという印象だから。それに、リリスが惚れた相手ということもある。悪い人物ではないだろう。


「では、単刀直入に申しあげます。ハルさんは、その……元の世界に帰りたいと思ったことはありますか?」


「ん~。あるよ?」


「えっ」


 ハルは『それくらい当たり前』とでも言わんばかりのノリで話し出す。


「俺は幸い役に立つチートスキルを持ってたし、着いて早々腹減りなところを魔術師の女の子に拾われたりしてラッキーだったから、最初の頃はその子に色々この世界のことを教わって依頼をこなしたり、なんだかんだで楽しくやってたんだ」


(リリスか……)


 まさか。そんな最初期メンバーだったとは。リリスの胸の内を思うと、いたたまれない心地になる。


「いや~、異世界に来て最初に食う飯が女の子の手作りおにぎりだったときは本当に感動した!梨々花リリカの作る飯はなんでも美味くて――ああ、リリカっていうのは俺の昔の友達で、魔術師の子なんだけど……」


(……知ってる)


「それで?その後はどうなったのです?」


「依頼をこなして、その度に街での魔王軍の被害とかを知るようになって。正義感に燃える一方で、やっぱ魔王とか危ないし無理だからやめた方がいいってリリカに言われて。それで、一旦は帰る方法を探してたりもしたんだ」


「……見つかったの、ですか?」


 唾を飲み込みながら聞き返すと、ハルは残念そうに首を振った。


「いや……俺の調べた限りじゃ、無かった。けど、旅をしていくうちに神様とか賢者とか魔王にも会ったから、そのとき聞いてれば何か違ったかも。俺が奴らに会ったときは、ぶっちゃけもう『帰りたい』とかそれどころじゃなかったから。神様とも戦ったし、賢者にはいきなり攻撃されるし、魔王は殺しちゃったし」


「ああ、そう……です、か……」


 いとも簡単にそう言ってのけるチート話に呆れつつ、期待を打ち砕かれたことに内心で肩を落とす。


(勇者も知らないとなると……やはり、彼の言うように『神か悪魔』に頼るしかないのだろうか?)


 俺はかねてからの目的を口にした。


「ハルさん。あなたは、神に会ったことがあるのですよね?先程も神と契約をしている、と。でしたらその……神に、会わせていただくわけにはいかないでしょうか?」


「えっ」


「もしお会いできれば、『異界の門』について知ることができるのではないでしょうか。僕は、その『門』からなら帰れるのでは、と考えているんです」


 俺の問いかけに、今までとは打って変わって表情を暗くするハル。静かに待っていると、ハルは思いつめたように口を開く。


「ユウヤ君……その口ぶりからすると、君は『帰りたい』んだね?」


 ゆっくりと首肯すると、ハルはため息を吐いた。


「そうか……できるなら、協力してあげたい。君のことはなんだか他人事には思えないから。でも……ごめん。神に……あいつに会うのだけは、オススメできない」


「それは……何故?」


「残念なことだけど、神様は……この世界の皆が思うような、人を助けてくれる存在じゃあないんだ。あいつらは基本好き勝手に生きて、気まぐれに人に力を授ける。勿論いい神様だっているけど、力の強い神が良い神だとも限らない。少なくとも俺が知ってる神は、生贄に可愛い女の子を欲するような、碌でもない奴だった」


「そん、な……」


「だから、もし君が奴に『何かを欲した』場合、見返りに何を要求されるかわからない。勝手に呼んでおいて対価が用意できないと知った場合に、キレて何をされるかも。実際俺達はそうやって神に戦いを挑むハメになった。もし俺にもっと力があれば、君を守って神に刃を向けてもいいんだけど、その……ごめん」


「ハルさん……」


 俺は、自信の無さそうなしょんぼりとしたその姿に驚くことしかできなかった。

 噂の勇者が、噂以上に優しい青年であったこと。そして、救国の英雄の口から出た『もっと力があれば』という、その言葉に……


 呆然とする俺に、ハルはまるで『ここにいない』誰かに謝るように告げる。


「俺はたしかに、魔王を倒した。けど……ごめん。俺じゃあ、俺達じゃあ――」


 ――神は、殺せなかったんだ……

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