第14話 永久の少女

を呼んだのは君かい?」

「……貴方は誰ですか、夜は病室には入ってはダメですよ」


 病室のベッドから起き上がり、突如現れた者に少女は問いかける。

 少女は体が弱く、余命はもう長くはない。


「君は願ったはず、何を願った?」

「え、どうしてそれを知ってるのですか?」

「悲願なくして、始祖たる余を呼ぶことは叶わないからさ」


 少女は不思議そうに首をかしげる。

 少女は死にたくない、と強く願った。

 人間はいつか死ぬ、終わりは平等に訪れる。

 遅いか早いか、その違いしかない。


「ずっと、私という人間が生きていたことを残したいのです」

「永遠か、人間である君には些か永久の時は苦しいモノになる」

「そうかもしれません、けれど、何かを残したいのです」

「君は美しいな、容姿も、心も」


 少女は再び困惑する、目の前の女性の方が余程神秘的で綺麗なのに。

 何故自分にこんな言葉を投げかけたのか疑問だったのだ。


「私は、瑠璃です、貴方のお名前は?」

「余は始祖の吸血鬼、ブラッド・オブ・クイーン」

「ブラッドさん? 変わったお名前ですね」

「神魔戦争に君は参加できない、君の肉体を余に授けてくれいないか?」

「よく分かりません、けど、私の体でよければご自由に」


 少女はブラッドと名乗った吸血鬼の言葉は何一つ理解できない。

 だが、もう少しで終わる命が、肉体が役にたてるのなら、と。

 無条件で許可していた、彼女にとってはこれも救い。


「ありがとう、瑠璃、君は余と共にこの世界に君臨し続ける」

「私は役にたてましたか? 何か残せたのでしょうか」

「ああ、美しく、最強の吸血鬼として君は生き続けるとも」

「私の願いは叶いました、貴方の願いもきっと」

「余の願いは君の悲願でもある、今宵が君との最後の会話になるだろう、けれど、永遠に君は私と共にあり、戦い続ける」


 代償として彼女から肉体を貰い受け、自身が使うその肉体に力を授ける。

 神魔と言えど、契約者バトラーとして人間の肉体である以上は力に制約がある。

 契約者バトラーの血を採取し、吸血鬼の伝承を取り戻し、完全な力を手に入れる。

 この世界で永遠に生きるのなら絶対的な力が必要だ。


「さようなら、優しい吸血鬼さん」

「さらばだ、瑠璃、あとは余に任せておくがいい」


 彼女は眠りに落ちてゆく、だが、それは死ではない。

 永遠の始まりであり、希望に満ちた美しい道だ。


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