第16話 解放
「てめぇの相手は俺だ、着物女」
「お前じゃ力不足だ、すぐに終わらせてやる」
雷門カリアと
お互いに
「てめぇ、何故四体の神魔と契約できた?」
「オレは元から四人だっただけさ、無駄話は終わりだ」
「電撃の力を見せてやるぜぇ、死ねや!」
カリアの周りから光が周囲へ無差別に放たれた。
周りの木々へ電流が走り、辺り一面は火に包まれる。しかし、彼女は既に地面にはいなかった。
カリアよりも遥か高く、空中に浮遊している。
「風の力を使えば、電気を食らう心配はないな」
「空中にいれば届かないとでも思ってんのかぁ?」
「この風の中でこの距離、お前に勝ち目なんてない」
「電圧を上げれば空気の中も通れるんだぜぇ?」
空気も物質であり、あくまで通りにくいだけで電圧次第では電気は通る。
だが、いかに電撃の力が強力でも根本的な問題がある。
「お前の足元をよく見てみろ」
「ああ? ……なんだこれは」
彼の足元には靴が沈む程の水たまりが出来ている。
こんな中で電気を無差別に放てば、自分が感電死することにもなり兼ねない。
「お前の電撃の力は強力だが、微細な操作能力がなければ脅威じゃない」
「風に水まで操れるのか、厄介だぜぇ」
「オレが契約してる神魔は四体だぜ?」
「……あと二つ操れる何かがあるわけか、くそが」
雷門カリアは焦り始めていた、明らかに実力差があった。
神魔の数の差は即ち、手段の数の差である。
さらに
まともな戦い方では勝てない、彼に残された手はただ一つ。
「
「
雷門カリアの周りにはイナズマが走り、その体は黄金に輝く。空中の電気を全て身に纏い、水たまりを歩いても影響は見られない。
電気への完全耐性、さらには自分自身を電気へと変質させることも可能とする。
正真正銘、最後にして最強の手段。
「コイツを使った以上、てめぇは終わりだ」
「
「水だろうが風だろうが関係ねぇ、火力がちげぇんだよ」
彼の言葉の通り、
絶対的な力を持つ個の前では数の有利を生かした戦い方では通用しない。
「確かに、お前は強いらしい。認めてやる」
カリアは面白くないという顔をする。
彼にとってはこの力は奥の手だ。
これを見ても尚、余裕を崩さない彼女に疑問を抱いていた。
「余裕だなぁおい、死ぬぜぇ?」
「
「ああ? 本気だぁ?
「お前にできることはオレにもできると思わないのか?」
心底楽しそうに、嘲笑っているかのようで。
雷門カリアの表情には僅かに恐怖が宿る。
「できたところで、互角だろうが」
「見せてやるよ、
眩い光が二本、羽のように彼女の背中から溢れ出ており、腕には光で構成された片手剣が作り出される。
彼女の周囲には夜だというのに、まるで朝日かのような輝きで満ちる。その姿は天使を彷彿とさせる絶対的な存在感。
「だが、互角なはずだ、同じ
自分に言い聞かせるように彼は呟く。
だが、それは希望的な観測であり、現実は非情だった。
「お前が電気に変質して速度をあげようと俺は光の速さで移動できる」
「攻撃が当たらないのはてめぇもだろうが」
「ああ、だが、時間が経てばお前は元に戻る」
元素の天使と契約する者が使う、
力は互角だとしてもその時間の持つ意味は変わってくる。
「元に戻れば、数の有利を生かしてお前が勝てるってかぁ?」
「オレはそんなに優しくないぜ」
「ああ?」
「
彼女の周りにあらゆる水が集い、それが固まり形を成していく。
リング状になったソレは彼女の上に浮かんでいる。
さらに水で構成された無数の剣がリングの周りに円形に広がる。
「な、なんだこれは、ざけんじゃねぇ!」
雷門カリアは理解したのだ、彼女の
四体の神魔と契約していた時点で気が付くべきだったのだ。
「教えてやるよ、持続時間もお前の四倍だ」
「はは、ハハハッ、これは無理だぜぇ」
「威勢の良さが消えたな、逃げてみるか?」
「馬鹿言え、光の速さで動ける奴相手に逃げれるわけねぇだろうが」
雷門カリアの仲間である虞羅三は強力な
その彼がなす術もなく敗北を期したのは相手がそれ程の化け物だった故。
こんな化け物のいるチームに襲撃をかけるべきではなかったと。
殺されるのが道理であり、勝てるはずもないのだと。
「スノウは強い、俺と互角だ。もう一人も直ぐに死ぬさ」
「わりぃな虞羅三、俺じゃあ、コイツは無理だぜぇ」
雷門カリアの目にはもう生気がない。こんな化け物と同等の相手がまだ一人残っている。その絶望感が彼を支配し、戦う気力すら失っていた。
「楽しい遊びだったぜ、雷野郎」
それが雷門カリアの聞いた最後の言葉だった。
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