第11話 同盟

「貴方、これ程の力、一体どんな代償を払ったの?」


 私、神崎真冬は六大悪魔の一柱である、タローマティと契約している。

 彼女は女神から悪魔へと変質した存在だった。

 固有の能力を考えなくとも上位に位置する実力を持つ神魔だ。


「性欲だよ、真冬ちゃんこれからよろしく!」


 彼は今なんと言ったのか、性欲?

 ふざけている、代償の話とか以前にさっきまで殺し合いをしていたはずなのに。

 まるで戦う前と同じでヘラヘラとした話し方をしている。


「……貴方、狂ってるわ」

「え? あー、さっきの怒ってる? ごめんごめん」

「まるで別人だったじゃない!」

「真冬ちゃんが攻撃的じゃなければ俺もあんな事しないさ」


 ……不気味だ。この男は狂っている。

 私が殺すと口にしてから彼は豹変した。何かがトリガーになって本来の状態が出てきている感じだった。

 この神魔戦争に参加すると決めた時から死は覚悟している。けど、コイツに殺されるのはごめんだった。


「マティは無事なの……」

「ん、あの悪魔か? アイツなら多分無事だぞ」

「確かに、契約紋はまだあるけど」

「完全に死ぬ前に向こう側に戻ったから無事なはずだぞ」


 彼自身も不気味だったけど、それ以上に能力が理解不能な物だった。

 明らかに神魔の力を超えている。

 しかも契約者バトラーである彼が行使していたことが信じられない。


「どんな代償でも、あんなデタラメな能力は授かることは出来ないはずよ」

「そうか? 代償の大きさの問題じゃないの?」

「大きさって貴方、全人類の性欲を代償にしてもあれは不可能よ」

「だから、俺の性欲が全人類より多かったってことだろ」


 やはりふざけている。私をからかって遊んでいるのかもしれない。

 神魔戦争では代償は必須、そこに例外はない。

 必ず何かを払っているはず、彼が正直に話す気がないのなら知る由もないけど。


「仲間として組むなら正直に話して」

「俺、正直な男だぞ、特に下の方に」

「はぁ、……もういいわ、そもそも貴方の言葉が本当なら性欲ないんでしょ?」

「おう、常に賢者だぞ」


 もう、真面目に接するのが馬鹿らしくなってきた。

 彼はこういう人だと思うことにしましょう。けれど、彼が契約者だとしても、私に対して通常の対応ができる理由はなんだろうか?


「貴方、私のこと、どう思う?」

「え? 謎の美少女?」

「……私に対して関心はあるのかしら?」

「ないよ、真冬ちゃんに限らずに興味がない」


 そうか、そういう事だったのね。

 彼は対応ができる。

 他の人は私にだけ関心が持てない、彼だからこそ、なのね。


「けど、それは契約者バトラーになった後じゃない?」

「ん、そうだな、最初は逆に性欲が強すぎたのかもな」

「はぁ、人類全て以上の性欲だものね、ふふ」


 本当か否かは判断できないが、もうどうでも良かった。

 彼は優勝者だと言っていたけど、私ではどうせ殺せない。

 なら組んで他を倒す方が効率が良いかもしれない。


「私からもよろしくね、変態さん」

「俺は変態じゃない、正直なだけだ!」


 こうして私、神崎真冬と彼、田中太郎の同盟が結ばれた。

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