第31話 回想
「君、そんな所に座ってどうしたの?」
雨の降る夜道。
金髪碧眼の女性が道端に座り込む青年に問いかける。
青年の表情は乏しく、その視線が女性を捉えた。
「お姉さん、おっぱい大きいな」
「……第一声がそれはちょっとビックリかな」
女性とは対照的に青年の容姿は平凡極まりない。
先程までの青年はどこか悲しい雰囲気だったので女性は困惑している。
まさか、最初の言葉がおっぱいとは予想していなかったのだ。
「俺は田中太郎、お姉さんの名前は?」
「私はフェリシア・ルイ・スノウだよ!」
「俺に何か用か? 逆ナンなら今度で頼むぞ」
「いやいや、違うよっ! 何か悲しそうだったから……」
今にも死んでしまいそうな危うさを感じ、青年に声をかけたのだ。
青年は学生服を着ており、深夜に道端で座っているのは不自然だった。
「……両親が事故で死んだ。なんで俺だけ助かったんだろ」
「そっか……。親戚とかはいないの?」
「いないぞ、一人で生きなきゃいけない」
「タロウはさ、誰のために生きてるの?」
青年は質問の真意が理解できず困惑した。
誰のために生きるのか――何故、自分だけ生きてるのか。
両親を亡くし、ずっと考えていたことだった。
「もう家族がいない……。誰かのためには生きられない」
「タロウ、自分のために生きようよっ!」
「……自分のため? それで幸せになれるのか?」
「強くはなれるよ。タロウは自分のために生きる覚悟はある?」
凡そ高校生の青年に問いかける内容ではなかった。
本来であれば、こんな選択を迫られるはずもないのだから。
だが、スノウは敢えてその覚悟を問いかけたのだ。
「どうして、……何故そんなことを聞くんだ?」
「強い人はね、自分のためって割り切れる人なんだよ?」
「強くなっても、家族はもういない」
「もし、タロウが自分のために生きられるなら――」
田中太郎は目の前の女性が差し出した手を見る。
華奢で美しいその手のひらに――その問いかけに。
「私が家族になるよ、二人で強く生きようよっ!」
*
「……夢? 此処どこだろう?」
私は確か……。
そうだ、同じ五天竜の契約者である四人組に捕まって。
「目覚めたか、フェリシア・ルイ・スノウ」
私に話しかけてきたのは屈強な男の人だった。
他の三人は近くにはいない、辺りには沢山の木々がある。
多分、森の中かな?
「どうして私を連れてきたの?」
「今、我ら
「……?
「いや、もはや我々が争っている場合ではないのだ」
目の前にいる男の人は真剣そのものだった。
彼の言い方はまるで――他に戦うべき相手がいるような口ぶりだ。
「我々契約者にとって、脅威となる勢力が二つ存在している」
「他の契約者のチームってこと?」
「いや、一つは――純粋な人間の集団だという」
正直、この人が言ってることが本当か分からない。
神魔と契約しないで
それも気になるけど、二つと彼は言った。
「……もう一つは?」
「”創造神の契約者”――ギルバだ」
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