神魔との契約の代償を「性欲」にした結果最強になれました

森 アーティ

序章

契約編

第1話 性欲の化身

「今日のオカズ何にしようかなぁ~」


 性欲、それは人間であれば誰もが持っている欲求である。

 三大欲求の一つであり、俺にとっては何を差し置いてでも満たしたい欲だ。

 当然、先程のセリフは夜ご飯を何にするかを迷っているわけじゃあない。


「最近ロリ系は飽きたからなぁ~お姉さん系いっちゃう?」


 ルンルンと上機嫌に俺はスマホの場面をスライドしていく。

 検索エンジンを起動させ、キーワードに「お姉さん系えっちぃ」と打っていた。

 因みに今俺がいるのは町中である、人が溢れる町中である。


「ねぇあの人ヤバくない?」

「ニヤニヤしてキショイんですけどw」


 俺とすれ違った女子高生たちが嘲笑う、しかし、問題ない。

 俺はそんな嘲笑すらオカズにできる男なのだ。


「フヒッ! ドS系女子高生って手があったか!」


 数人こちらを見て振り返ってきたが周りの目など気にしない。

 俺は自分を持っている人間だからな!

 ワクワクとした手捌きでスマホに「ドS系女子高生えっちぃ」などと入力していると何やら前から二人組の男たちがやってきた。


「ちょっと君、いいかな」

「え? なんすか男と話してる時間ないんですけど」


 目の前の男達はお揃いの制服を着ている、とても仲良しなようだ。

 警察服という名の制服である。

 あれ? これって……職質?


「君、盗撮とかしてるんじゃないの?」

「というか君学生かい?」


 二人組の仲良しのお兄さんたちから職質をされているわけだが。

 盗撮なんてするはずがない、俺は見るより触るほうが好きなのだ。

 まぁスカートを見てパンツを想像するのは好きだけど。


「○○大学の一回生です、はしてません」


 勿論、犯罪行為はいっさいしていない。

 あくまで想像力豊かな自分の頭の中であれこれとやっているにすぎない。

 やましいことなど欠片ほどもないのだから職質されてもなんら問題ない。


「スマホ、少し見せてもらっても?」


「え?」


 やましいことしかない俺のスマホを見せろと申すか。

 あれ、どうしよう、これ別に悪いことはしていない。

 だがさっきまで俺が検索していたものを見られるのは流石にまずい。


「深淵を覗いた時、深淵もまたこちらを覗いてるのだ!」


 おい、捻ってだした答えがこれなのか俺!

 想像力豊かな頭はどこへいった、マズイ、どうしようピンチである。


「その人、別に盗撮なんてしてなかったわよ」


 艶やかな黒色の長髪と透き通るような緑色の目をした高校生くらいの少女だ。

 制服を着ていてまだ幼さが残るその顔立ちはとても愛らしい。


「そうなのかい? これは失礼したね」

「我々は失礼させてもらうよ、君、これからは怪しい行動は控えるように」


 俺は何故か、違和感を感じた。

 確かに今の場面、この子がやってないと言って警官がそれを信じただけのはずだが何処かおかしい。

 普通あそこまで疑ってたのにあんな簡単に引き下がるだろうか?


「助かったよ、ありがとう」

「貴方、もう少し人目を気にしなさい?」


 何処か高圧的な話し方だが嫌味の感じない自然な態度が魅力的な子だ。

 しかし、エロに生きる俺がこの子にはのだ違和感しかない。

 この子は普通ではない、そんな気がした。


「俺は田中太郎だ、よろしくな」

「ふふ、明らかな偽名ね、私は神崎真冬」


 一つ言っておくと俺は偽名を使ったわけではない、本名である。

 この日本においてテンプレートな名前に見えるが、実際には田中太郎なんてそうはいないので、偽名を疑われても仕方がないのかもしれない。


「本名だぞ、今度お礼はするよ」

「何? 私にまた会いたいってこと?」


 どうやら新手のナンパだと思われていそうだ。

 確かにいつもの俺ならそのつもりだろうけれど、これほどの美少女でありながら。


「まぁナンパみたいなもんだ」

「え? ……本当にそうなの? 信じられない……」


 ドン引きされた意味での信じられないではなく、別の意味であるように聞こえた気がした。

 まぁ普通に考えたらドン引きのほうだろうけど。


「勿論迷惑ならやめるけど、本当に感謝はしてるぞ」

「ふーん。連絡先、交換しましょう?」


 これほどの美少女の連絡先がゲットできたのにまるで嬉しさを感じない。

 この子と話しているとだ。


「これでよし、と、じゃあまたな」

「そうね、楽しみにしているわ」


 俺は逃げるように立ち去った、あの子と話していると自分が狂う感覚に襲われる。

 美少女との会話で緊張でもしたのか? ……いや、あれはそういうのじゃない。



「ねぇ、あの人、契約者バトラーなの?」

「違うよ、あれは普通の人間だよ」


 絶世の美少女が問いかけた存在は、凡そ人間とは思えない姿をしていた。漆黒の翼を生やし、赤色の目に黒色の尻尾がある、性別はあるのなら女性だろう。


「それにしてはを持っていたように見えたけど」

「そんなはずはないよ、普通の人間は関心なんて持てない」


 絶世の美少女は腑に落ちないといった顔だ。

 彼女と契約を結んだ悪魔も同じような表情をしていた。


「貴方への代償――その影響も受けない人間もいるのかしら」

「余程、大きな欲でもあったのかもね」


 古から存在する悪魔ですら測れない欲望。少女はそんな謎の存在へ向けて笑う。


「貴方程の大悪魔でも測れない存在……。面白いわね」

「そうだね、彼が契約者バトラーになったら君でも勝てるか分からないね」


 起こりうるかもしれない小さな可能性を想像して、悪魔も笑った。

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