第7話 キャラクターは作らない
「どうやって物語作るんですか?」と時々聞かれる。
私はキャラクターから考えてることが多いかなー。
「キャラ」ではなく「キャラクター」
キャラはいわゆる、お約束のことだ。
お嬢様キャラ、王子様キャラ、妹キャラ、ヤンキーキャラ、姉御系お母さんキャラ、マッチョキャラ、ツンデレキャラ、やれやれキャラ、眼鏡をかけていたら秀才で、髪の毛くるくるだったら天然アホ、黒髪だったら真面目で、上司はいるかいないかわからないくらいのおじいちゃん。でも時々真価を発揮する。
こういうのは全部「お約束」だ。
日本ではまったく問題ないが、海外翻訳ものばかり読む私は、こうした「お約束」にあんまり惹かれない。もう少し人間味のある「キャラクター」にこそ惹かれたりする。
じゃあ、どうやってキャラクターを作るか?
簡単である。生きている人間をモデルにすればいい。
あるいは歴史上の。
前にこんなキャラクターを作った。
舞台は近未来。環境を壊しすぎた人間は建物を造り、その中だけで完結するコミュニティを形成していた。平和を享受した結果、軍は戦争を記録する管理人としての機能しか果たしておらず、それすらも理事会によって廃止案が出ていた。
そこに登場するのが気の強い女性キャラである。
彼女はもともと親がとんでもない金持ちで、みんなに反対されているのに軍人になり、ポケットマネーで軍備を拡大、新たな軍人を雇い、自分の給料から天引きして彼らに支払い続けた。そうやって「軍」を復活させたのである。
ま、わき役なんだけどね。
彼女のモデルは、ナイチンゲールである。
「クリミアの天使」とか「看護婦の母」とか言われているけど、彼女のカッコ良さって、当時「汚い職業」と思われていた看護婦に就いて、ポケットマネーで病院建てまくり、看護婦の給料あげて社会的地位を上げたことなんだよね。
19世紀にして身を粉にして働くキャリアウーマン。社交場出身。
超カッコいいじゃない。
でも、この話を読んだ人にモデルがナイチンゲールだなんて、バレやしませんでしたよ。だってやってること真逆だもの。でも、モデルってそんなもんだと思う。
「看護婦」や「天使」という言葉に引っぱられると、軍人キャラは出てこない。しかし、ナイチンゲールが実際にやったことや、周りにどう思われていたかという「構造」だけ抜き出すと、どんな舞台にも、どんな職業にも転用可能なのである。
キャラクターは「作るもの」と思われがちだが、どっかからもってくれば充分だと思う。知り合いとか、神話の神様とか、歴史上の人とか、哲学者とか。やっていることを変えてしまえば、わりとモデルがバレない。ガンジーをモデルに暴力的なキャラクターを作ることもできる。ようは「非暴力、不服従」の言葉にとらわれず、「構造」で考えるのだ。
キャラクターが固定したら、あとは物語を作る。どういう人間かはわかっているのだから、事件さえ与えてしまえば、キャラが勝手に動いてくれる。わお。楽だ。
こうして、私は血の通った人間を書くために、学習漫画「世界のえらい人」を読みあさるのである。これ大好きなんだよねえ。
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