第156話 モラハラを受けてた話 ※一万字超え

 ちょっとこちらで厄祓い。


 じつは今年、モラハラ被害を受けており散々な目にあいました。


 とくに下半期はずーっと落ち込んでいたのですが、たぶん私のことだから数年もしたらいろいろ忘れてしまうでしょう、なにされたかも忘れて似たような目に遭うともわからないのでこちらに記録を残しておきます、リア友見てないし。




〜以下は落ち込んでる人にはきついのでスルーされたがよろし〜




 さて、モラハラしてたのは編集者です。


 出会ったのは去年の四月。


 ずっとあこがれていた出版社の方だったので、向こうから声かけてくれて私は舞い上がっておりました。その編集さん、中学生のお子さんがいる女性。三回目の転職で、その出版社には入って日も浅い。自分の仕事を作りたくて新人作家に声をかけてる印象でした。


 ほかのレーベルでは断られそ〜な作品(でも自信のある作品!)をあえて引っさげ、あちらもめっちゃ喜んで前向きに検討してくれることに。


 無事に企画会議にも通ったのですが、ここではじめて、こう言われます。「編集長が『これはシリーズにしなきゃもったいない!』と言ってるのですが」と。


 ぶっちゃけ、その作品を書いたのは五年も前。それから一度も「続きを書きたい」と思ったことはありません。でも新人作家の私にそんな話が出るなんてすごいこと。しかも編集さんはめちゃ喜んでくれてるし、たぶん困ったら助けてくれるにちがいない。私は「がんばります」と返事をしました。


 物語を考えるのは得意です。

 しかも、舞台もキャラもすでにある。


 編集さんが「いっぱいシリーズ出したいですよね! 四ヶ月に一冊とか出したら話題になりますよね!」と言うので、私は不安ながらも「三部作くらいならなんとか……」と答えました。「一巻を売り出すためにも、二巻があります! と銘打って売り込みたいんです」と言われたので、「急いでるんだな」と思いました。ほかの出版社とも仕事があったのですが、優先事項をいちばんにして、書きはじめました。


 プロットが大まかに決まったタイミングで編集さんに会ったので、あらすじをざざっと口頭で伝えました。するとにこにこしながらきいていた編集さんは「それはもう、みりあむさんの書きたいようにしてください!」と言いました。


 ここで、あれ? と思いました。この人、相談にはいっさい乗ってくれないっぽいぞ。どんな話になるかもわからないのに大丈夫? というか、新人の私になんでそんな全幅の信頼をおけるの……でも、やると言ったんだからやるしかない。きっと私は自分で考えなきゃいけないんだ。


 書くのが早いのが長所です。15万字くらいの原稿を一ヶ月で書いて送りました。しばらくして、一巻に比べると、やはり……というお返事をもらいました。


 それは自分でもわかっていたこと。なぜ面白くないかを自分なりに分析し、編集さんの意見もかんがみて、新しいプロットを送りました。すると、前よりいいと返事が来たので、一章だけ書いて送り返しました。何度かやりとりを経て、「この調子でそのままいってください」と返事が来たので、残り八章を書きました。


 これで、15万字を二回書いたことになります。


 年を越して二回目の原稿を送りました。すると「とりあえず一巻の製本を進めるので、しばらくお待ちください」と言われて放置されました。


 ここまではいいのです。編集者というのは忙しい。やってるうちに予定も変わる。数ヶ月、一年以上原稿を放置されるなんて慣れています。


 ただ、「一巻目を売り出すために二巻を」と言われていた私。その件はなくなったのだというのなら、明言してほしいけれどその気配はいっさいない。どういうつもりなのかわからない。


 まあ、何度かやりとりしているうちに、自分に都合の悪いことはごまかしたり誇張するタイプの人だとわかっていたので(土日祝に送ったメールの返事、普通は営業日の月曜に戻ってきます。が、彼女はいちいち「⚪︎⚪︎のせいでメールに気づかず〜」みたいな言い訳を添えるような人でした)「まあ言い出しにくいのかな」と思うことにしましたが、あまりにも説明ないので不安はありました。


 打ち合わせの時点では「社をあげて宣伝します! 表紙は三ヶ月前からネットにあげて宣伝します!」と言うので、イラストレーターさんにも急がせていました。私、個人的にイラストレーターさんとつながっていたので、はらはらしてましたが編集さんを通しての返事を待っていました。するとメールが。


「表紙絵のラフです!」


 待ってました! と確認しつつ、大きめの間違いに気づいて編集さんに返事を送りました。「この部分は直してもらうようにお願いします。あとは最高です!」

 するとすぐに返事がきました。「もうこのままでもよくないですか?」と。


 え。いや、何言ってんだこの人。なんのための著者確認?


 すると、ほとんど日を置かずにメールがきました。

「表紙絵が完成しました!!」



 は?



 え、待って。この人著者確認せずにラフ絵OKをイラストレーターに伝えたってこと? んでイラストが完成する間際に状況証拠で私にいちおうメールした??


 これにはイラストレーターさんも真っ青です。話し合った結果、私が直してほしかったところは考えようによってはいけるか……となり、そのまま通すことに。いや、時すでに遅しだったから仕方なくって面が強いですが……にしても……。


 けっきょく二巻の話はないまま、一巻の進行が進んでいきます。


 怖いので、以降のイラストチェックは直接イラストレーターさんとLINEでやりとりしました。挿絵が多い作品だったので。ちなみに編集さんからのイラストチェックはいっさいありませんでした。ほかの会社ではあり得ないことですが。


 で、ゲラはいつまでたっても進みませんでした。


 ゲラは誤字脱字を見つけるために必要不可欠です。プロの校正さんが入って、物語内の矛盾も指摘してくれます。それがいつまでたっても来ない。


 とうとう、校了の十数日前に校正チェックの入ったゲラがきました。念校で。


 念校ってのは、最後の最後の、「もう直しはないけどいちおうのチェックね!」という校正ゲラです。この時点で私はもっとせき立てるべきだったと後悔しました。でも、そんなことできない雰囲気だったんです。


 なぜか、編集さんからメールが来るたびに、かならず末尾にこわい文言が並ぶようになっていたのです。「本を作ると言うのはあなたが考えているよりずっとたいへんなんです」とか「私もがんばっているんです」とか「みんなできることを精一杯やっています、ご理解ください」とか「この本はコストがものすごくかかるんです」とか……。


 えっと。


 私はいっさい責めるようなメールは送っていません。頭の中ははてなマークでいっぱいです。毎回メールに「もちろんわかっています」とか「感謝しています、ありがとうございます」と書き添える私。そんな中で文句なんて言えない。


 やきもきしながらも、ひとつだけはっきりさせないといけないな、と思い、「シリーズの話はなくなったんでしょうか?」とメールにしたためました。刊行の一ヶ月前くらいだったと思います。


 すると「一巻が出てから、またゆっくり考えましょう」と返事が。


 ああ……なくなったんだな、と思いました。


 まあ、いいんです。二回目の原稿を送ってからゲラ作業などをして、どうにも一巻とのつながりが弱いと思っていた矢先でした。シリーズにするにしても、方向性を変えたほうがいいと思っていたところです。ワンピースみたいな連続したひとつながりの話ではなく、ドラえもんみたいなオムニバス形式にしたほうがいいと思っていました。なので、メールの返事にはその旨と、一巻が出るまではシリーズの話はないものとして考えますね、ということを書いて送りました。


 すると、秒で返事が返ってきました。


 めっちゃキレられました。


 メールだとぜんぜん伝わりませんね! という前置きで、こっちはがんばってるんだ、理解してくれ、だいたいそんな方向性で売れると思ってんのか、という長文メールがきました。めちゃめちゃ怖いと思いました。


 こんなときは、ちょっとKYでも伝えるべきことを伝えるべきだと思い、「私は意見を言っただけです、あまり怖いメールを送らないでください、メンタル弱いので本当にお願いします」と返事をしました。するとやはり秒で返事がきました。


「ええっと思って自分が送ったメールを見返してみたが、どこが怖いかわからない」「怒ったメールではない」「率直に意見を伝えただけ」「だがまあ、あなたがメンタル弱いのはわかった、以後気をつける」という内容でした。


 ……このあたりから、いえもっと前からそうだったんですが、この人のメールがこわくてたまりませんでした。「こう送ったら、普通の編集さんならこう返ってくる」という予測が、ことごとく外れる。斜め上のこわいメールが返ってくる。意味がわからない。


 しばらくして、本が完成しました。


 念校ではじめて校正が入った本が。


 本が届いて泣いてしまったのは初めてです。素晴らしい装丁でした。めちゃくちゃいい本でした。なのに中身が誤字脱字だらけかもしれないと思うと、くやしくて涙が出ました。私はそのまま校正の通信講座の受講を決めました。いま、六ヶ月目です。テキストを読むたびにあの悔しさを思い出してけっこうつらいです笑


 ちなみに、あれほどイラストレーターさんをせき立てたのに、表紙イラストが宣伝として使われたのは発売の二週間前くらいでした。ほかの出版社ならおそくても一ヶ月前には表紙が出るのですが……。


 そして、久しぶりに編集さんと会うことになりました。


 メールではいつもキレてるので、とても緊張しながら行きました。ところが、会うとびっくりするほどにこやかです。メールでは本意が伝わらないと思い、こういうつもりで続きを書きたいんですと説明しました。編集さんはうんうんときいていました。既視感をおぼえました。最初のあらすじを口頭で伝えた時とおなじでした。にこにこしているけれど、きいているのかわからない、あの感じ。


 私がすでに送った原稿のふたつめは、「それプロット段階でわかったじゃん」というレベルの、アイテムの使い方が悪いという感想をいただいたのですが、私の中ではひとつながりのストーリーはもはや現実的ではなく、オムニバス形式でやりたいと伝えました。私は意見を言いましたが、向こうは意見を言わずに終わったのが、少しひっかかりました。話し合った感覚がないというか……。


 帰って、編集さんに伝えたとおりのオムニバス形式でプロットを書いて送りました。すると、超長文のメールが返ってきました。


 めちゃめちゃキレてました。


 そんなんで売れると思ってるのか、何をしたいんだおまえは。「この半年間、私たちはずっと反目してましたよね」「いっちゃなんだが、私たちの関係は、がんばってどうすればシリーズになるかを必死に考えている編集と、原稿がなかなか進まずに不満を募らせている著者だ」




 は???




 原稿が進まずに……反目? え? あなたの説明不足と威圧メールには辟易してたけど。原稿が進まないという理由でキレたことは一度もないけど????


 ちがいます、誤解です、この方向で書きたいというのは、いやがらせでもなんでもなくて、私は模索しているだけですとメールしました。が、返ってくるのはキレ散らかしたメールばかり。二回試してダメで、方向性を変えてみてはどうかとアイディアを出してもダメで。それならどんな作品が良いと思いますか、ヒントでいいので教えてくださいとふってみると「そんなことに編集はぜったいに答えない」「作家として未熟だと思う」というにべもない返事……。


 いや、未熟だよ。こちとら新人作家だよ。

 あんた新人作家に声かけてまわってんだろうが???


 きいてもいないのに、あちらはいろいろ言ってきます。「私はこの世界で二十年生き残ってきた、センスはあると自負してる」「私がいけると思ったものはいける」「私の仕事は見つけることであって作ることではない」


 ……このへんで、この人と仕事する意味あるかな? と思いはじめました。


 私は昔風にいうのなら、「創作キチガイ」です。昔風すぎました。「創作好きすぎマン」なんです。


 ぶっちゃけ、創作できるならべつに作家なんてならなくてもいい。同人会で出してるだけでも、カクヨムで書いてるだけでも満足です。読んでくれる人が数人でもいるならば。でも、編集者と物語を作ると、クオリティが爆上がりします。私が仕事としてやりたいのはそれがいちばんの目当て。仕事にするとなると、向こうも真剣です。なので私の作品をめちゃめちゃブラッシュアップするために全力出してくれる。私は経験を積める。ウィンウィンの関係。


 でも、その編集さんは……私の「作品を書き直していって、面白いものを作り上げられればいいと思ってるんです」という言葉を、「そんな習作みたいなものは求めていない」とバッサリ切り捨てました。「買い被ってた」とも。それ他人に向けて使う言葉なんだすげー。


 すごーく、傲慢を感じました。あと役立たず感。

 なら同人でいいじゃんっていう。ネットでいいじゃん、まじで。


 丁寧に丁寧に、なんで私がこっちの方向性で書きたいと思ったか、無理ならこの話は流してもいいと伝えたところ、ようやっと向こうも態度をゆるめて、なんとなく和解したような雰囲気になりました。シリーズの話は流れました。でも、これ以上疲弊するくらいならいいやと思いました。もともと、私は続きを書きたいわけでもなんでもなかったし。


 でも、その出版社と縁が切れるのはとてももったいない。


 私がその出版社にあこがれていた理由は、何を書いても「異色」と言われがちな私の作品でも出してくれそうな、ふところの深さです。


 なので編集さんには「いまこんな新作を書いています、できたらまたお送りします」と言って、いったんこの話は終わりました。


 でも、新作を書きながら、「あの人ともう仕事したくないな」という気持ちはふくれあがりました。


 書いてもほかの出版社に持っていこうかなあ。うん、そうしよ。あーあ、担当変わらねえかなあ。転職くり返してるらしいし可能性はある。ていうか、あの人まだ私が「原稿を進めないから怒った」って思い込んでるよな。そこをベースにずっと怒ってきてたもんな。そこだけ誤解が溶ければまだ分かり合えそうなんだけど。てか、そこを否定されたらきっぱりサヨナラしてこの話終われるな。


 思い立った私は、「例の件なんですが」とメールを送ることにしました。


 ぶっちゃけ、けっこう自暴自棄になってました。もちろん丁寧さを心がけつつ。


「もしかしてこういう理由で誤解されたのかも? なら申し訳ありません、たしかにこういう件で不満を持ったこともあったんですが、今はなんとも思ってないし、今ここに書くことすら恥ずかしいくらいです、本当になんとも思っていません」よし、ここまで書けば誤読することもないな! 送信!


 朝起きたら、夜中の二時半にメールが返ってきていました。


 超長文メールでした。


 私のメールの「こういう件で不満をもったことも〜」ってとこを拡大解釈して、当時の言い訳がずらっと並んでいました。


 こわあ……。


 あ、もうこれはサヨナラ案件だわ、と思って、簡単にメールを送り返しました。不満をあげつらいたいわけではなかったんです、落ち着いてまたメールを読まれたらわかってもらえるかも、でも私たち相性が悪かったみたいですね、いつかまたお仕事できたらいいですね、さようなら。


 十分もしないうちに長文メールがきました。


 前半は「補足ですが」からはじまる、昨日のメールの続きでした。私はがんばっていた、あんたが本当に書きたいならオムニバス形式のシリーズだってあり得たのに(?! さんざん売れないってなじってたくせに?)私ががんばっていろいろやっていたときにみりあむさんから「シリーズあんのか」とメールがきて、イライラしながらメールを送った、そしたら「怖いメールをよこさないでください」と返事が来たのは事実(え、おまえあの時の自覚あったのかよ?!)。


 そして途中で「ここまで書いて、あなたから返事のメールがきました。そうですね、相性悪かったですね、ご健筆を。さようなら」え……前半消さずに送り返すんだ……こわ……。



 かなり精神やられてましたが、まあ私も言いたいこと言えたし、二度とかかわることはなかろう、とにかく終わってよかった……と思ってると。


 追いメールがきました。


「いやあんだけ不満連ねるメールよこしといて、相性悪かったですね、さようなら、ってあんたどういうつもり?!」めっちゃキレてた。


 いくら説明しても、私が送ったメールに害意がないことは伝わりませんでした。むしろ日本語が通じない。「それはさすがに揚げ足取りじゃありませんか」という私の指摘に「はあ、そんなことはどうでもいい」と返され、「そもそもあなたが怒っているのは、私がちょこちょこ不満を持っていると思い込んでいるからだと思います、そこがちがうとわかってください」と言うと、「だって私がちゃんと説明しないと、またみりあむさんが私にちょこちょこ不満を持っちゃうじゃないですか!」…………。



 それまでは、なんとかわかってもらおうと頑張ってましたが、「あ、この人わかろうとする気ゼロだわ」と思いました。「「ちょこちょこ不満を持ってる」人とこれ以上やり取りするのは精神衛生上悪いと思いますので、もうメールをよこさないでください」と返事を送りました。ほんの一分前に追いメールがきていて(「もういいですよ、私がぜんぶ悪いってことにすればいいでしょ!」)やっとこさ話は終わりました……。



 これが、一巻が出てから、ひと月後の話です。

 二巻がないので一巻というのもおかしな話ですが。



 こんなことあるんだなあ、と思いました。


 いや、人に話すと驚かれます。夫からのモラハラを受けて離婚した友達に話したら「それモラハラじゃん……」と言われ、翻訳してる友達に話したら「それガスライティングじゃん……」と言われました。


 最後は私も暴れ返したけどね。しかしあれくらいは許されるはずだ。


 ていうかモラハラを取引先相手にするとか意味不明。



 メンタルはかなりやられました。くそ。当社比70%の執筆量削減ですよ、どうしてくれる。編集者として最悪だろ。




 出版社や編集者は作家に比べて数が少ない。つまり作家仲間が増えていくとおなじ担当の作家も当然います。私は例の編集さんと共通の知り合いが3人いました。そのうち一人はほぼ同期だったのでよく相談をきいてもらっていました。


 で、次に会ったとき「どうせあの人から私の悪口きいてんでしょ〜」と軽口をたたいたら、深刻な顔で「うん」と……。


 あの直後、私とのトラブルを一から十まで説明した長文メールを受け取っていたそうです。しかも読んでいるそばから「補足ですが」と追いメールが届く届く。


 さすがにそこまでとは予想していませんでした。打ち合わせで会った時に「ちょっときいてくださいよ〜」って感じで愚痴るくらいならありえるかなと……。


 え、まじで? やばいじゃん……ぜんぜん関係ない人にそこまでするの??



 これは残りの二人にもメールがいってる可能性が高い。しかしそのメールを受け取った人は「私がみりあむから相談を受けてたって答えたからだよ」となぐさめを言うし、たしかに残りの二人はもっと関係ない。しかもこのタイミングで私が「あの編集者が!」なんてメールを送ったら、たぶん心証は私の方が悪い。


 落ち込みつつ、動かずに静観をつらぬきました。

 三ヶ月ほどして、残りの二人のうち、Sさんと久しぶりに会う機会が。


「……ねえ、例の編集さんからへんなメールが来てたんだけど……」やっぱりか。「見る?」と言われて「やだ、見たくない」と言ったのですが「いいから見てよ」と半ば強制的にメールを見せられ、愕然としました。


 私が送った最後のメールをコピペして、「みりあむさんから衝撃のメールを受け取ってしまいました……!」と、超長文がつづいていました。わーお。


 Sさんに「こんなメール受け取ったけどみりあむちゃんからはなんもないから、そういうことだったって察したわ……」と言われ、メールしなくてよかったーと思いました。いや、しないのが普通だよ。関係ない人にまで悪評流しまくる編集者がおかしいんだよ。やばいよ。ほんと、縁切れてよかったー。


 Sさんは翻訳家さん。今度出る本は私も大好きなシリーズの最終巻です。私にも一冊くれると言うので楽しみにその日は別れました。私の話を信じてくれたのもうれしかった。ガスライティングって言葉を使ってくれたのもSさん。意味は「被害者が「自分こそ悪い」と思い込むように加害者が仕掛けること」です。まあ、モラハラのよくある特徴のひとつですよね。


 すると、ほんとにそれから三日後くらいに、ポストに不在票が入ってました。


 例の編集者の会社でした。


 めちゃめちゃ怖くなりました。えっ、なに?


 想像できるのは、Sさんのシリーズの最終巻。その献本かと。私、その本が好きすぎてSNSで推しまくってたから。で、担当してるのは例の編集者。



 ……え、私に宣伝して欲しくて送りつけてきたってこと?



 あまりにも常識とかけ離れた行動すぎて思考がまわらず。あれだけのことを言っておいて、あれだけのことをしておいて、どの面下げてそんな真似ができるのか?


 翌日、自宅にいたので荷を受け取る際、差出人の名前を確認しました。不在票には会社名だけだったので。やはり例の編集者でした。


 ぜったいにメモが入っている。手書きの手紙が。そんなものは見たくもない。これを受け取るということは、私はそのことをTwitterで言及しなければならないし、読んでも読まなくても悪く言われる。だって功労者は例の編集者だから。


 私は受け取りを拒否しました。配達のお兄さんは「大丈夫ですよ、返却しときま〜す!」と笑顔で去って行きました。救われた……。



 しかし、私のメンタルは過去最低にまで落ち込みました。


 ちょうど数週間後には人前に出るお仕事があったのですが、そこに例の編集者が来たらどうしようと、ありえない妄想にとりつかれて何も手につかなくなりました。だって献本だって、私にとってはありえなかった。何をしてくるかわからない人なんです。予測がつかないんです。


 そこで私は動きました。


 同人会の先輩作家さんにいままでのことを説明して、おなじ会社の編集長に連絡をとってほしいとお願いしました。先輩の担当さんは、最近編集長になったばかりだときいていたんです。わらにもすがる思いでした。


 はじめは「あの会社と縁を切るのはよくないよ」とか「気にしないのがいちばんだよ」とか「いちおう話はするけど、今日明日とはいかない」などと言われましたが、メンタル最低の私は希死念慮をいだくまでになっていたため、「会社とつながるより生き残る方が大事です」と食い下がり、そこまで言うと先輩も「やばい」と気付いたのか、迅速に動いてくださいました。


 担当編集者が代わり、例の編集さんは今後いっさい私に連絡を取れなくなりました。編集長から謝罪メールがとどき、これで本当の意味で縁が切れました。



 めでたしめでたし。



 はあ……。





 ちなみに、すべて終わったあとSさんに「私が受け取り拒否したこと、例の編集さんから報告ありました?」と聞くと、メールのスクショをぺたっと貼ってくれました。意訳すると「私には他意なんてなかったのに、完全否定ですよ、、みりあむさんのせいでSさんにまで不快な思いをさせてすみません」って感じです!


 笑えるのは、私とSさんは十年来のお友達、対して例の編集者とSさんはせいぜい二年くらい(転職してきてまだ二年経ってない)なのに、よくもまあそんなメール送れるね? 中学生女子か?! ってことですよ!!!



 笑い飛ばさないとやってけないくらい疲れました、はあ……。





 本当、そろそろ回復しないといけませんね。


 最近は「睡眠が大事だ!」という気づきを得て、たくさん眠るようにしています。とりあえず、質より量! 学者さん曰く、質では量はカバーできないみたいです。睡眠は鬱にもよく効くようなので、正月は寝るぞ!


 例の編集さんと縁を切ったメールのほんの一時間後に、二年半音沙汰のなかったべつの会社の編集さんからメールが来て、いまはその改稿原稿を書いています。


 ほらね、私、二年半放置されてもぜんぜん怒らない人なのにね……がっかりはするけどさ……なんだったんだろうね、あの人の被害妄想って。




 いちど、この話をベテランの作家さんにしたとき「それって4、50代の女性?」ときかれました。え、そのとおりですけど……。


「ときどきある話で、昔、作家を目指してたけど才能のなかった中年の女性編集者が、才能のある若手の女性作家に嫉妬してトラブルになることがある」


 ……さあっと、血の気が引きましたね。


 例の編集さん、会ったばかりの時に「昔、作家を目指してた」と確かに言っていた。でも自分には才能がなかったんですと。


 そういえば、なんも言ってないのに「せっかく早く書いたのにとか思ってるんでしょ!」「私にはセンスがあるんです!」とか、まくしたててたなあ。


 ええええ。


 めちゃめちゃ八つ当たりじゃん。

 私なんも悪くなくね……。




 みなみなさまにおかれましても、変な人には十分にお気をつけくださいませ。


 来年はのんびりやるぞー!

 平和に!!!



 ここまでお読みくださりありがとうございました、拡散はお控えください♡

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る