第37話 データはときどきウソをつく

 セクシュアルマイノリティ、略してセクマイ、一般的にLGBTは、13人に一人の割合でいるというデータがある。


 これは左利きやAB型の割合とほぼほぼ同じ。

 クラスに一人やふたりは、絶対左利きやAB型っていたでしょう?

 だからクラスに一人やふたりは、絶対いるんですよ、セクマイさん。


 こんなふうに言っても頭の固い人はなかなか信じてくれず、「だって自分は会ったことないし」とかおっしゃる。「そんなデータ、だれが調べたの?」なんて疑いの目で言われちまったこともある。




 さて、去年の夏の話をしよう。


 私は住み込みで避暑地のレストランバイトをしていた。



 わりと気軽にいろいろな人が働きにくるので、行くたびに知らない人と知り合えるお気に入りの場所だ。東京の夏は暑いので、きっと今年も出稼ぎに行くだろう。


 そこで私は、一緒に働いていた女子高生と仲良くなった。

「みりあむさん、彼氏いるんですか?」

 無邪気に訊いてきたうら若き乙女に「彼氏はいないけど彼女はいる」と伝えると、

「私もバイなんです!!」

 え、まじ?!


 仲間っているんだな。言ってみるもんだわ。



 そのレストランには、外国人も多く来る。

 ウーフという制度で、オーガニックファームを営む側は寝床と食事を、働く側は労働力を提供する。お金が一切発生しないシステムなので、利用する学生やヒッピーが多いのだ。そのレストランでも、よく外国人が顔を出す。


 仲良くなったアメリカ人ハーフの女の子は、見た瞬間わかった。

 この子、絶対ビアンだわ、と。


「実は私、女の人と付き合ってるんだよね」

「私もー!!」

 こんな感じで仲良くなった。向こうでは人は見た目でセクシュアリティがもろバレらしい。むしろ彼女は私をしげしげと見て「見た目じゃ全然わかんない」と驚いていた。あの女子高生も、見た目じゃわかんなかったしなー。



 その女子高生と、先日江ノ島に遊びに行ったんである。


「あの時にいたポーランド人、覚えてます?」

 ハンバーガーを食べながら女子高生が言った。はいはい、あの、わりと日本語のできたカップルね。

「あのふたり、カップルじゃなかったんですよ。女のほうは女しか好きにならないんですって。ずっとみりあむさんのこと、すてきだすてきだって言ってましたよ!」


 なんてこった。

 なんでその時言ってくれなかったの?

 何か起きたかもしれないのに!(おい)



 わりと震撼したのでここに記します。

 あの夏、少なくとも避暑地でともに過ごした女四人はセクマイでした。

 割合的には五人に一人くらいのメンツかな……全然多いじゃん。


 だからね。

 今、あなたのとなりに座っている人も、もしかしたらセクマイかもよ。

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