第83話 19歳で決めたこと

 いい小説ってなんだろな?

 と創作の師匠にきいたところ、こんな答えが返ってきました。


「陽性の中に陰性が溶け込んで、そこにゴニョゴニョ」

「なるほど! つまり明るくて暗いってことですね?!」

「なんでいっつも簡単にまとめちゃうの?」


 ごめんなさい、笑

 だって師匠の言ってることよくわかんないんだも〜ん。

 もっとわかりやすく教えてちょんまげ〜。酒も入ってるんだから〜。



 師匠曰く、絶望を体験していない人の小説は読んでて面白くない、とのこと。

 べつに普通の身の上でも普通の生活を送っていても関係ないらしい。

 人間はいつでも絶望できる。





 自分が絶望しているかどうかはさておき、私は物語に残酷性を少しでも描きたいと思っている。


 しょっちゅう「でも、無意識に残酷書いちゃうんでしょ」とか言われるが、ちがうのだ。私は書きたいんである。わりと意識的に入れている。だって私が最終的に書きたいのは「希望」だもの。



「希望」って、扱いが難しいと思っている。


 絶望している人に「これが希望ですよ」なんて差し出しても、うさんくさくて受け取ってくれやしないのだ。リストカットしている人に、「やめたほうがいいと思うな」と言っても、にっこり笑っていなされるだけである。毎晩薬と一緒に酒をあおる人に、生きることの素晴らしさを説いても、むなしいだけである。そしてある日、ぽっくり実行に移されて、結局なにもできなかったことを知るだけだ。



 だから私はそういう人も読んでくれるように、残酷を書きたい。


 だって死にたい人はそういうものを読みたがるのだから。そういうものしか、受け入れられなくなっているのだから。


 残酷で、もうだめだと思った先に、でも、ちょっとだけど希望もあるよ。

 そう告げられるくらいでちょうどいい。



 そんなふうに思っているけれど、さて、伝わるかどうか。

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