第26話 英国的慇懃無礼文章について

 イギリス人の書く文章が大好き。ブラックユーモアと皮肉を織り交ぜていかないと死んでしまうんです! と言わんばかりの意地の悪い文章がとにかく好き!


 イギリス人と言っても、個人差はあるだろう。だが、奴らはそういう国民性なのだと私はにらんでいる。アメリカ映画がさわやかとアメコミ的ヒーローエキスで構成されているように。日本の創作ものが絆とドロドロねっとり成分でできているように。イギリス作品はシニカルと知的文章で構成されている。


 アメリカ人の書く文章も悪くないな、と思う今日この頃。映画「オデッセイ」の原作、「火星の人」を読んでいる最中なのだが、この文章が面白い面白い。火星に一人取り残されるという絶望的サバイバルなのに、文章のそこかしこにあらわれる「イエイ!」の文字。ポジティブすぎだろ!


 これはアイアンマンの監督が作った映画「シェフ! 三ツ星フードトラックはじめました」を観たときにも壮絶に感じた部分だ。とにかくこいつら、「ネクラ」ならぬ「ネアカ」なのである。根っこが明るい! 問題が起きると「クソ。最悪」と一応毒は吐くものの、次のシーンでは問題解決のためにとりあえず行動しているんである。ぐじぐじと悩む心情描写はさしはさまない。日本の小説だったら二、三ページ落ち込むところも、火星に置き去りにされた主人公は「ブー!」のひと言で終わらせる。


 イギリス人の性格の悪い文章もいいけど、アメリカ人のお気楽文章も、なかなかいい。こういうものに影響されて書く私の文章は、ときどき「ドライ」なんて感想をいただくこともあるが、私からすると日本人の書く文章が「ねっとり」なんだと思いますよ、ええほんと。問題は、そのねっとり加減こそ、日本で書いていく上では必要な成分であって、きっと私はたとい本を出せる日が来ても、売れることはないのだろうな……とは思う。


 ま、いっか。

 すきなもの書いてこ。

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