第70話 3

 前にいっとき、古今東西の民話ばかり読んでいた。

『ジプシーの民話』という本を読んで、すっかりはまってしまったのである。


 民話は面白い。神話とちがうのはレギュラーキャラがいないことくらいだろうか。


 神話が神々というキャラクターを擁した「短編連作」ならば、民話は全部ちがう世界観、ちがうキャラクターの登場する「短篇集」だろう。


 さて、そんな民話はとても創作の参考になる。


 なんせ長い年月かけて生き残った実績があるのだから、そこで使われた「定石」はとんでもなく汎用性が高いのである。著作権もないしね!



 私がわりとよく使うのが、「3」。


 アラジンは3つのおねがいを叶えてもらうし、原作の白雪姫は3回継母に殺され、同じく原作のシンデレラは3回舞踏会に出かけている。生き残るのは3番目の子ブタだし、桃太郎のお供は全部で3匹。日本神話のえらい神様は、たいてい3姉弟。


 3の使い勝手の良さったらないよ。


 前に書いた天狗さんのお話では、お山を追い出された怠け者の天狗が出会う人間は、最初に木こり、次にお侍さん、そして三人目でやっと旅医者に出会う。


『千年王国〜』では、キャラクターをそれぞれ3人ずつ考えた。3人の厭世家、3人の天使、3人の悪魔、3人のアリトンの子ども。



 3回繰り返せば「はい、それでもダメでした、主人公はこの運命を受け入れるしかありません」という展開に説得力を持たせられるし、いきなりばーんと解決するより、三度目の正直! という紆余曲折を見せてあげれば、読んでいて気持ちがいい。


 それ以下では物足りないし、それ以上だと冗長だ。


 3はすごい。


 えらいのだ。

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