第69話 鉱泉水はめちゃおいしい

 つい先月の話である。


 実父に「今度帰るね」と電話を入れて数日後、連絡があった。


「温泉地にいるんだけどこっちに直接来る? おれ一泊して帰るから」


 どうしよう。すごくめんどくさい。いつもの高速バスとちがうバスを探す過程がすでにめんどい。もうお父さん放っといて実家に帰ろうかしら。とシェフの奥さんにこぼしたところ、「でも温泉行ったらきっとすごく喜ぶでしょ?」と言われた。


 うん、絶対喜ぶ。お父さん私のこと大好きだもん。誕生日覚えてくれないけど。


 現在他の家族と折り合いが悪いのもあって、父とは良好な関係を築いておきたいので、面倒なのを押してネット検索。バスチケ予約できましたよっと報告の電話。


「あ、言い忘れてたけど混浴だから」




 なん……だと……?




 くそっ、やられた。

 もうバス代払っちまったじゃねーかくそっ。


 というわけで人生初、混浴温泉に行ってきました。




 着いてみてびっくり、どうも様子がおかしい。

 あまりにも静かな温泉街、寄る年波の客層、そして寄宿舎のおばちゃんみたいなノリの女将さん……。



 そう、ここはただの温泉街ではなく、湯治場だったのである。



 めちゃめちゃぬるい微炭酸の温泉につかり、日に十時間も浸かって身体を治すのだとか。ぬるすぎて浸かっていると寒くなるので、源泉を温めた風呂場もあるが、本当に効くのは29度の水みたいな大浴場。ちなみに小学校の教室くらいの広さはある。


 混浴とはいえ、大事なところは隠さなくちゃいけないので私もガーゼ生地みたいなタオルを貸してもらった。しかしこれが短い。かなりきわどい。もう峰不二子みたいなセクシーさになる。やばい。


 しかも身体洗う場所も男女共同じゃねーか!

 いや一応カーテンで区切れる箇所もあったけど!


 しかしガーゼタオルはぬらしたら伸びたのでちゃんと大事なところ隠せました☆

 やったね☆


 そして基本お年寄りばかりだったので全く平気だね、しかも面白い話たくさん聞けて「めっちゃ創作のネタになるやんけ!」状態。お父さんありがとう。



 父がここへ来た目的は「足の捻挫を治すため」だとか。


「やったー治ったー。一ヶ月も治らなかったのに」とか言ってたけどさ……父、放っといたらすぐ動いちゃう仕事人間じゃん……治るものも治せないタイプじゃん……?


「二日間も水に浸かってじっとしていた」から治ったんじゃね……?


 とはさすがに言えないな☆




 みんなもおじーちゃんおばーちゃんになったら行こうね、湯治場!

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