第32話 統計的に有意な数字
十人十色って言うじゃないですか。
十人いたら十人ちがう人みたいな。
あれね、個人的にちがうと思うの。だって70億人いたら70億通りの考え方が存在するってことになっちまうでしょ? まあ細かいことをあげつらえばそうはなるんだろうけど、そんなに無尽蔵に考え方が存在するとは思えない。
そこで統計的に有為な数字の話をば。
これは「世論調査」ってやつだね、はい。政治とか思想とかアイドルの人気を計るのにアンケートをとる。だけど日本人1億2千万人に聞いて「はいこれが調査結果です」と言うのはめんどくさすぎる。そこでもっと少ない人数に聞いてまわる。日本の人口では、だいたい1500人にアンケートを聞けば、ほぼ正確な「日本人の総意」を調べることができるらしい。
昔はこれがちょっと理解できなかった。なぜなら中学の先生が、「これは例えるなら、このクラスから代表して赤枝君ひとりの意見を聞いて、それで判断するようなもの」と言い放ったからである。赤枝君はうちの学校でいちばんのワルだった。「そんな適当なの? だめじゃん!」と思ったもんである。
しかしあるとき、突然この数字に納得できるようになった。
「みそ汁作ったときに、鍋のみそ汁全部飲まなくても味見はできるだろ? つまりそういうことだ」
ああ、なるほどね! 納得。
ちょっと調べてみたらこの数字、1万人の集団で調べるならば1300人で、10万人で1500、そのあとは10億だろうが100億だろうがその近辺で変わらないようだ。小さい鍋で作ろうが、大きい鍋で作ろうが、味見はスプーン一杯でこと足りるってことらしい。これって、人間の価値観、だいたい1500通り! ってことにも置き換えられるんじゃないか?
すると急にその数が少ないように見えてくるような。うむむ。
1500、多いか、少ないか。
だけど世間を見渡すと、どうも「善か悪か」「敵か味方か」「0か1か」の二元論が多いようにも見えるので、2通りじゃなくて、1500通りだよって言われれば、マイノリティには救われるもんがあるかもしれない。
ま、そんな感じで。
ゆるく生きていきたいな。
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