第53話 堕落論

 100分de名著という、eテレの番組をご存知でしょうか?


 伊集院光とアナウンサーとその道の識者が、1ヶ月かけて一冊のテーマについて話すという、めちゃんこ興味深い番組。私、本当にこういうの大好き。


 で、坂口安吾の「堕落論」が取り上げられていたのです。



 戦争直後、日本人はそれまで「美徳」とされていたことから離れはじめ、罪悪感にとらわれました。


 お国のために死ななくてもいいし、夫を戦争で亡くした未亡人は再婚してもいい。


 美徳から大きく逸脱していくさま。それを坂口安吾は堕落と呼び、「どんどん堕落するべきだ」と述べたのです。




 私、いつも思うんです。

 何が正しいんだろう?

 どっちが間違えているのだろう?



 たとえば、人生の先輩に「こうしなさい」「そういう生き方じゃダメだ」と言われる。


 そんなとき、ある人は「時代がちがうんだ」「経験則が正しいとは限らない」と言う。



 私はどちらが正しいのかがわからない。


 経験というものは子どもの頃に思っていたよりも重いものだとわかってきたし、かといって後者のように、常識に縛られない考えも大切だと思うんです。




 坂口安吾は言った。


 必要なものだけがそこに有ればいいのだ。必要に迫られるなら、法隆寺を潰してバスの停留所を作ったって構わない。本当に法隆寺が必要なら、自ずと人々はそれを建てるだろう、と。




 創作関連の方々はWeb小説について懐疑的です。


 編集者がいない作品なんて録なものにならないよ。Web小説なんか書いてないで、ちゃんと書きなさい。





 そうは言われても、本当にそうかな? と思っちゃうのです。



 確かに紙の本を出せたら嬉しいけれど、一億総クリエイターと呼べるネット社会。一概に「インターネットなんて」というのも時代遅れな気がするし、この流れは止まらない、むしろ抗ってもいいことないような気がするんです。


「レディプレイヤー1」は本当に面白かったんだけど、ラストに提示されたメッセージには首をかしげました。



「リアルな世界を大切にしなきゃ」




 それって本当にそうかな?


 それってお前に彼女が出来たからだろ?

 ネットの世界でしか輝けない人はいるだろ?


 一人一人の幸せの形はちがうはずなのに、価値観を押し付けるってどうなの?



「時代はこうなった」まではいいけど、「だから問題だ」と言うのは、どうなのだろう…価値基準は決めつけない方が柔軟に動けるのでは…。



 でもそれって、堕落なのかしら。


 どっちが正しいのかしら。




 若者なりに、悩んでいるのです。

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