第152話 人には人の向き不向き
最近、人生初のお仕事をもらった。
イラストである。
デザイン科時代、私はスケッチブックを持ち歩いていた。
お絵かきが趣味だった私、どこでもお絵かきばかり。まわりも絵の描ける連中ばかりだったので最高に楽しかった。ていうかけっこう上手いと思っていた自分の画力がしょっぱかったことに気づかされた。
ガチで美術系の高校に通ってた子とかいたので、普通科でちょっとうまいくらいの私はまさに井の中の蛙。
恥ずかしかったけど、絵の上手い子と並んでお絵かきしてると画力がぐんぐん上がる。そらもう上がる。二年間でだいぶ上達したと自負している(当社比)。
そんな一年生の時、私より百倍絵の上手い子に訊かれた。
「みりあむは絵で食ってけるようになりたいん?」
福岡弁の子だったんです。
私、答えて曰く、「いや、実際、私程度の画力で絵で食ってけると思う?」
「NO」の意味だったのだけど、その子は「そらわからん」と福岡弁で答えた。
「絵って、何がウケるかわからんもん。ヘタウマとかもあるし」
なるほどなあ。でも私は絵で食っていく気はなかった。
そのころは、すでに隠れて小説を書きまくっていた私。小説家になるつもりもなかったけど、いつか自費出版したいなと思ってお金を貯めていた(当時、同人誌という存在を知らなかったので、自費出版するために100万はかかると思って貯めていたが、学費に消えたりしていた)。
さて、そんな私は絵でお金をもらう日は来ないだろうと踏んでいた。
が、お話が来てしまったのである。いやはや何が起こるかわからないね。
最初は断ろうとしていたんだけど、友人で推しでもあるイラストレーターさんに「こんな話が来てさー」と話したら、「えっ、絶対買う!」と即答されたので引き受ける気になった。ちょろい。超絶推しに言われたらその気になる。即決。
で、iPadも買って楽しくお絵かきしていたが。
いくつか描かなきゃいけないイラストの、とある絵がどうしても描けない。考えただけで描けない。気が重い。断りたい。他のは頑張るからこれだけ許して。
という案件が出てきてしまった。プロの絵描きじゃないから仕方ないね。
どうしよう、どうしよう、困って友達Mに相談したら、こんな返事が来た。
「もうちょっと頑張ってみて、それでもできなかったら先方に相談したら?」
私は友人Sに相談した。ちょっと言い方を変えて、より私の味方になってくれそうな文章を考えて送った。
「断っちまいな! あたしゃ絵描きじゃねえ! って言っちまいな!」
そして私は気がついたのです。
あ、私、断ってもいいよって言われたかったんだ。
背中押して欲しかったんだ。
よっしゃ、断ろ!!
というわけで、友人ふたりに相談することで自分の本音にも気づけましたよという話。「断っちまいな」と言ってくれる人があらわれるまで相談しまくる妖怪となっていたかもしれないね。無事人間に戻れてよかったよかった。
先方には先ほど連絡しまして「ぜんぜん大丈夫ですよ! 伸び伸びやってください!」とのことです。ていうか向こうも私がプロじゃないって知ってるの込みで仕事くれたもんね、そらそうだ。
できなさそうな仕事を手放したので、肩の荷が下りました。ひゅう。
みんなもお仕事は、ほどほどにね!
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