第40話 不出来な真珠に価値がある
こんなたとえ話をきいたことはないだろうか。
美しい真珠は大量の真珠のほんの一握りで、選り分ける職人がいる。
良くない真珠ばかり見てきた職人は美しい真珠を見落とす。
しかし、美しい真珠ばかり見てきた職人は決してそれを見落とさない。
これ、そんなに正しくないと思うのだ。
私は若いうちからとある同人会に入ったのだが、七年以上たっても私より年下がまずあらわれない。児童文学の会だからか、所属しているのはわりと年齢層が高く「子育て終わったので来ました」といった方々も多い。五十代で作家デビューもよくきく話なので、私はなんの心配もせずに「ま、いつかデビューくらいはできるな」とぬくぬくしながら切磋琢磨しているのである。
そこでの提出作品はどれもレベルが高い。
物語の質というより、文章においてあまり破綻がないのである。
私はそこで「文章が粗い」とさんざん言われたけれど、どこがどう悪いのか、はてさて皆目分からなかった。「え、だってみんなと同じように書いてるじゃん?」と思っていたのである。
しかし、大学の創作ゼミにもぐり込んでビビった。
若者の書く文章の、その稚拙さに。
カクヨムでも時々お見かけする。うん、わかりますよね?
かれらは趣味で書いているのだからいっこうかまわないのだ。下手だろうが上手かろうが全然いい。「下手の横好き」のなにが悪いのかわからない。「好き=得意」ではなかろうに。そんなもんは他人が口をはさむこっちゃない。
だがそういう作品は、私は読まない。つらいので(おい)
しかしゼミ生の作品は読まないといけない。どんなにつらくても。
……うん。つらかった。
だが、そんな文章をがんばって読むうちに「何がいけないのか」がだんだん見えてきたのだ。「あ、私も似たようなことをやっちゃってるな」「このくどさ、私の文章にもあるな」
そうやって少しずつ「見えてきた」のだ。
今では少しずつ「文章が粗い」と言われる回数が減ってきた。先日の会ではだれからも言われなかったくらいだ。も、もしかして合格?!
いやいや、気を抜かないようにしなければ。
日々精進である。
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