雨藤フラシ

作品タグの「神」「化石」「サメ」という並びに首を傾げたのですけれど、それがこのようにつながるとは……。 　作中で登場人物が語る恐怖と「暗黒の世界」は、現代の私たちにとってはごくご…続きを読む

　この人の引き出しはいくつあるんだ!? 　私は『コーム・レーメ』が大好きなのですが、再び「架空の世界の歴史にまつわる物語」を書いて、ここまでの完成度を打ち出してくるとは……。 　…続きを読む

冥王ハデスが豊穣神デーメーテールの娘・コレー（ペルセポネー）をさらい、地上に季節が生まれるかの神話を、バッキバキにキャラが立った神々でポップに組み上げた最高のオリンポスラブコメ。 …続きを読む

　病弱な少女のユースティアは、両親からの「おつかい」で、しゃべるお手紙「ガイドさん」をお供に、地下深くへと降りていく。そこで出会う三人の妖精は、それぞれ正義の話をしていて……という…続きを読む

美しく残酷で、それでいてドライ。このサラサラと乾いた感じが、草さんの味だな……という一編。 「身障者が身を寄せ合う村」という舞台設定がなかなか厄いものの、うまいこと突っこみすぎず二…続きを読む

ドロドロと重すぎず、爽やかな男女の恋愛を書かれるのが得意な（※人食い調べ）佐倉島さんの作品です。なんというか、結ばれるべくして結ばれる二人というか、温かい気持ちで見守りたくなる男女…続きを読む

　旦那様、と卑屈な調子で呼びかけ、語り始める冒頭、良いですね……。まず思い浮かべたのは太宰治『駆け込み訴え』です。 　内容についてはネタバレに関わるので省略しますが、共通する登場…続きを読む

　人間として生きていた時は王と臣下だった二人が、神として昇天し、再会するお話。 　終盤で語られる、神は信者の供えもので生活しており、存在もそれによって保証されている。すべては虚構で…続きを読む

　いじめられっ子の死後、彼を苦しめた者たちが次々と惨殺されるという王道のストーリー。ラーメンを期待したらラーメンが出てきた、という手堅い味わいです。 　私は小学校からホラーMやサ…続きを読む

そいつを捕まえれば、きっと何か良いことが起こるに違いない。皆が思い思いに想像を巡らせ、噂する「ゴトー」を、少年と少女が待ち伏せしようとするお話。 　非常にクールで観念的なお話で、…続きを読む

　これは信頼できない語り手かな？　と思いながら読んだら、おや、様子が違うぞ……と転がされ、あの結末。読者がそう予想するのも、実はきっちり考えてのことなのでしょう。 　特にラストシ…続きを読む

狙撃というものは、人間の精神と肉体の耐久性を極限まで追求するような行為です。そのような状況にしばしば人は神を見出すものですが、本作は「狙撃する」までではなく「狙撃した」後のお話。 …続きを読む

人間は必要な栄養素さえ、自分ではいちいちわからない、どんくさい物だ。 私は〝父と子〟というテーマが好きである。読むよりは書く方が好きだし、とりわけ●●父子（※本編ネタバレ回避）は…続きを読む

怒濤のルビと設定が目を引く現代吸血鬼ファンタジー。 特にこの「吸血鬼」の設定が作り込まれており、科学的な説明をつけて「吸血鬼なんてそういう病気にかかっただけの人ですよ」とうそぶきな…続きを読む

舐めていた――！ 尖ったタイトル、開いた1ページにまるごと詰めこまれる一万以上の文字数……それらのファーストインプレッションから不安を感じながら読み進めてみたら、謎めいたとある企業…続きを読む

　最初はロマンチックなSFだなと思ったが、とんでもないサイバーパンクでした。AIの自我と感情。 　作品紹介の粗筋と出だしで、もうこれだけで一つの掌編として完成してるじゃん！　ここか…続きを読む

わずか一万文字ながら、胸に迫るお話だった。見ようによってはあの幕切れは悲劇とも映るが、これは決まっていた結末で、梓ちゃんはそれを踏まえてミリアムと過ごしていた。 ミリアムはアンドロ…続きを読む

pixivでイラストを見つけ、本編を読んだ後でカクヨムの方に来ました。 　吸血鬼が人間を支配するサイバーパンクなディストピアで、人間である主人公に友好的に接する魅力的な吸血鬼美少女…続きを読む

新しく吸血鬼になった方向けに、現代社会で必要な諸手続きその他のハゥトゥエッセイ。 　と、いうていのフィクションなのだが、細かいところまで切れ味の良いセンスでネタが詰まった、非常に…続きを読む

　潤土（うるんど）という九州の田舎に存在する、架空の漁村と、その地にまつわる神事と呪いの中編ホラー。 　テープの書き起こし、貼り紙、雑誌の記事を挟みながら、さまざまな年代の女性たち…続きを読む

架空の歴史をしっかりとした実在感で描き出した一篇。その中でわずかに交差する、時代に翻弄された女性たち。 タグに注意書きがあるように、固有名詞ルビが多いのだけれど、そこが堂々として…続きを読む

二話ラストで「は？」となり、そのまま怒濤の勢いでエンド。この展開は予想できなかった～！　マモンさんの行動動機が企画の主旨なんだなあと納得していたら、まさかのぶっとび方だよ……おそる…続きを読む

食事は気心の知れた相手とするのが、一番楽しい――そんなシンプルな考えが、カニバリズム題材の作品で表現されるのは珍しいと思います。 　というのも、カニバリズムはその性質上、祭りのよう…続きを読む

本作は、主人公の胃加物さんがとにかく魅力的なキャラクターです。いわゆる食人家なのですが、〝命は平等〟という精神が徹底しており、その思想は人肉以外にも遺憾なく発揮されます。カラスやト…続きを読む

　貴族の庶子に生まれた主人公が、実家の没落によって求めた就職先は監獄だった！　という出だしから「おっ」と思わされるのですが、さらに、なぜかそこには魔王を倒した勇者様（♀）が囚われて…続きを読む

出だしたの一言めが、「受験を間近に控え、鬱屈した学生」が主人公であること、日常に退屈した主人公の青春物語であることを一発で分からせる秀逸さに、「最後まで読もう」と思わされました。 …続きを読む

昨年、作者さまがTwitterでバズった際に本作を知り、読了して「私向けではない」とモヤモヤしながら星だけ入れました。先日、ふと理由を言語化できたので書いておきます。 いわゆる「…続きを読む

とある時代の日本。領主と、領主に反逆した父親の間で板挟みになった主人公は、父と合流して領主を討つか、それとも領主に赦しを請いに行くか、どちらにせよ成功しそうにもない選択を迫られる。…続きを読む

なぜ、それが彼女にふりかかったのか。 なぜ、それで人が死ぬのか。 なぜ、その形なのか。 そうした理屈が一切通用しない、ただただある条件を満たすと死ぬ、というだけの怪異はあまりに理不…続きを読む

――では、蹴った先は、どこだ？ 疲れと苛立ちから取った、ほんの少しだけ「いつも」から外れた行為。それが主人公を恐怖と非日常へいざなう。ホラーの基本なのだが、起きた事象の原因と経緯…続きを読む

　中華後宮ものはあまり読んでいないのですが、初めは怠惰で横柄、型破りな小娘が、王妃の側仕えに大抜擢され――というストーリーは中々王道のものかと思います。本作はそれを、確かな知識と軽…続きを読む

死を前にした恋人の魂を留めるため、自作のオカルト装置に手を出した主人公。その目論見がもたらすものは……というお話。 恐ろしさよりも切なさ、愛する人と別離する悲しみを主軸とした一編。…続きを読む

現実とは少し異なる、「異端者」によって発展したもう一つの19世紀ロンドン。その異端者の中でも「のけもの」にされる少女・ドロッセルは、誰からも認められない日々を終わらせようとがむしゃ…続きを読む

本作は「サイエンス・ファンタジー」ではなく「サイエンス・フィクション」の意でのSF小説である（ジャンル自体は「現代ドラマ」選択だが、サイエンスが題材という点ではSFでも間違いじゃな…続きを読む

綺麗に起承転結がまとまった掌編。転の箇所で「あっそっち方向のホラーか！」と思わせて、オチの部分で更に膝を打ち、きゅっと〆られてしまった。 出だしはしとしとと陰気な、いかにも怪談怪異…続きを読む

落ちぶれた中学時代のいじめっ子を、順風満帆の人生を送る今、あざ笑いに行く。 あらすじにするとそれだけの話だが、それを描き出す筆致に凄まじい情念がこもっている作品です。一言一句、読む…続きを読む

ある青年の死から始まる、「二人」の少女たちの物語。青年以外は名前すら語られない、ひと夏ひと晩の短いお話ですが、切ない出会いと別れのストーリーでした。彼女の語る「ロマンチック」のロマ…続きを読む

輝かしい青春の思い出、幼馴染との夏の約束。その思い出が続いていくとしたら――そして別れのときが来るとしたら――これは、そんなほろ苦さと甘酸っぱさの詰まった掌編です。タイトルやあらす…続きを読む

ある霊現象事件を、クールでドライないい根性した主人公と、愚か可愛い助手ちゃんが解決する読み切り短編。 　依頼人の「駄目だこいつ……」なクズさを堪能しつつ、「いったいどういうことなの…続きを読む

「優勝賞品は、次代の神の座。参加賞は願い事ひとつ。ゲームが始まらなければ、世界は終わる」そんな異能バトルロワイヤル群像劇。悪魔と契約し、コンビを組んで殺し合いに臨む１３名それぞれの…続きを読む

どうしてこの主人公は、某ジャンクフードチェーン店での食事で、ここまで大仰に表現出来るのだろう――半ば呆れつつ、げらげらしつつ、最終的にはちょっぴりしんみりする。まあそれなりに充実し…続きを読む

作者の実力がさらに練り上がっていることを感じる一作。これが編集者さんに鍛えられた作家というものか……おのれ！　面白い！　まず出だしから既に物語のドライブがかかっているし、1000文…続きを読む

「ん？」と思うようなタイトルに惹かれて開いてみたら、擬人化キャラを作ろうぜという企画会議から始まり、ああやっぱりねという知ったような気持ちで読み進めていたら……舐めてました、すいま…続きを読む

最初は主人公たちのやりとりを、ああ若いなあなどと自分の学生時代を懐かしみながら読んでいたら、なんということだ！ 「黒い錠剤」の正体になあんだと拍子抜けしてからの、ですよねーという流…続きを読む

怪異とおぼしき謎の「もふもふさん」。とにかくもふもふ概念の塊のような存在としか言いようがないが、主人公ともふもふさんには仲良くしていって欲しい。もふ。

図書館の虫だった子供時代、夢中で読み漁った幻想文学の世界を思い出すシリーズ。一話と二話は二人の主人公・蛮族カブリとエルフのブレトが故郷を出るまでの物語で、どちらも素朴な民族の生活感…続きを読む

バッドエンドに取り憑かれた人間と吸血鬼たち、そしてそれに抗う主人公の物語。特異体質の主人公が、吸血鬼の少女を殺すところから始まるこの物語――とだけ言うと類似作品を思い浮かべる方もい…続きを読む