見てる世界は一つじゃない。立ってる世界も一つじゃない。

――では、蹴った先は、どこだ?

疲れと苛立ちから取った、ほんの少しだけ「いつも」から外れた行為。それが主人公を恐怖と非日常へいざなう。ホラーの基本なのだが、起きた事象の原因と経緯、そこに潜む因果と、「呪い」の本質が、作者独特の世界観と暗黒神話体系とで織りなされています。
例によっていあいあな神様の気配がちらっと匂うのもご愛嬌。分かる人だけ分かる感じで、ニヤリと出来ます。

タイトルの「狗神」はどこで出るのか? と思っていたら、それが分かった時の爽快感は素晴らしい。ミステリー・サスペンス的なロジカルさと、呪術の世界の理不尽さ、不条理さも同時に存在するのがこの作者お得意の業前を感じさせてくれますね。

しかし、夕野さん、何者かしら……?

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