禍福の縁がより合わされて、怪談は紡がれる

物語は、深夜、アパート住まいの女子大生が近所の酒乱騒ぎに耐えかね、近所の扉へ鮮烈なキックを繰り出すことから、始まります。

扉は、叩けば内の何かが応じるもの。
ある種の義憤と悪意のこもった乱暴なノックをきっかけに、彼女の周囲では怪奇現象が起きます。あたかも彼女の悪意に報いるかのように、扉を叩く音が彼女につきまとうのです。

まさしく因果応報! というホラーの醍醐味の一つが味わえる上、オカルトに詳しい友人が彼女の力となり、佳境には事の真相が紐解かれます。

人は誰しも、心の内に悪意を抱きます。
けれども、あまりにありふれていて、何事も起きなければ、無いモノとしてしまうものです。
そして無いことが当たり前になっているという事実を、思い出させてくれるものがあるとしたら、それはある意味、まじないと言えるでしょう。つまりは祝福です。

そうは言っても、悪意そのものは呪詛には違いないのですから、試みなくてはいけません。
何かが潜むかもしれない扉を叩くのです。
それが怖いとお思いになるのでしたら、ちょっと無謀な彼女の物語を開いてみてはいかがでしょうか。