概要
目を覚ました少女はクチナシと名乗り、警察を呼ぼうとする禮次郎に対して此処に置いて欲しいと頼み込む。
禮次郎は謎めいた雰囲気のクチナシに対する興味と不幸な境遇への同情から、彼女の頼みを聞き入れる。
それが後に訪れる狂気の世界への入り口だと、彼はまだ知らない。
基本的に連作短編風味です。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!醤油の香り高き和製ホラーエンタメ
全ての創作は作者個人、また作者の想像力を養った空間・文化の土着性からは逃れえないというのが私の持論です。
プロパーの日本人の私にとって、一番怖いホラー、最上級のホラーとは、醤油の香りがするホラーです。夕飯の香りの残る深夜の食卓が、自分の知り得ない闇に変わるかもしれない。昼間は勝手知ったる学校の夜の闇の中に、何か自分の知らないおぞましいものが蠢いているかもしれない。それは地球の裏側に現れたゾンビの大軍団や大怪獣などより、どれだけ恐ろしいことでしょう。
人類の歴史とは、闇を照らし蒙を啓き、自分の知らないなにか恐ろしいモノがいるかもしれない領域を縮め続けてきた歴史です。そうやって獲得した居心…続きを読む - ★★★ Excellent!!!楽しい飯テロご当地小説
日本社会で最強(近年は暴排条例等で弱体化していると言われてるけど作中の時代では最強)と言えるヤの付く自由業な主人公ですら、宇宙的なスケールでは簡単にあしらわれる辺り、何かあのヤバい神ヤバいって感じなのだが、正直クトゥルフ神話のことに明るくない自分は飯テロ小説のように夕飯食べつつ読んでました。
また、ラノベではこれまで池袋、秋葉原、千葉、博多などの都市が扱われて来たが、北海道にフォーカスした作品はあまり無かったように思う。北海道の地域伝承などを上手くアレンジしている点は良い着眼点だと思う。
正直なところを言うと、この作品は一部の「分かってる」人向けなのかも知れない。クトゥルフ神話やら他の海野し…続きを読む - ★★★ Excellent!!!仁義を切るなぞ遅すぎる。化物共を撃ち殺せ。その感触が、正気を引き戻す
少女の形をした愛おしい化物の手を取って、敵なる醜悪な化物共を相手に、銃弾を派手にぶちまける。
誰が正気ともつかないような、そんな地獄をお望みなら、この作品がオススメです。
主人公の香食禮次郎は、表向きは街の薬剤師、その正体は麻薬を売り捌くヤクザと、裏と表の世界をまたぐ男です。隙あらば他人を食い潰す破落戸の非情さと、一般人と同じように平穏を望む感性が同居しています。
そんな彼が、少女の姿をした怪異と出会った時、凄惨な死を経験し、それからはというもの、次々と名状し難い怪異事件と遭遇します。
それは、正確には、彼の世界に潜んでいた邪悪な存在に気づいただけのことであり……彼がヤクザに身を落として…続きを読む - ★★★ Excellent!!!仁義なきクトゥルフ神話との戦い!! ちゃらら~
「クトゥルフ神話」×「ヤクザ」という異色の作品。
主人公はヤクザで、成人で、もちろんアウトロー×ヒロインはロリで、人外で、僕っ子っていう――「異色」×「異色」みたいな物語でした。
基本的に一話完結で、物語がテンポよく進んでいきます。その物語の中で次の物語、そして大きな物語につながる伏線が散りばめられているので、満足感と次への期待感を持ちながら次の物語に進んでいけます。
僕は「クトゥルフ神話」初心者なのですが、何の問題もなく楽しむことができました。作品の中で必要な情報は全て提示されるので、「クトゥルフ知らないから、ちょっと……」って迷っている人も安心して楽しめると思います。
本作の見所は…続きを読む - ★★★ Excellent!!!狂気へ堕ちていく彼女と共に
任侠!クトゥルフ!ロリ!エログロ!SAN値喪失!
タイトルと最初の一話でも読めばすぐに実感する、この物語の要素である。
が、ソレだけじゃないのが本作の魅力だろう。
ヤクザなエログロバイオレンスという、エンターテイメントな魅力だけじゃないのがいい。
それが成されているのはおそらく、著者のクトゥルフへの、そして何よりもSAN値を失っていく者への愛がこめられているからだ。
この物語はきっと、忘れられたある者達への物語である
歌いましょう その子のために
踊りましょう あの子のように
泣き叫び どこまでも走り続けましょう
あの時に見た 悪い夢のように
あぁ、大きく硬い殻の中に
まだあの…続きを読む - ★★★ Excellent!!!狂気に侵された脳髄は、血反吐すら甘く感じさせる。
特筆すべきは圧倒的な落差と速度。
そしてそれを不自然に思わせない構成の妙でしょう。
見せたい武器(シーン)が無数にある中で、選りすぐりの殺傷力を持つ場面だけをひたすらぶつけられているような、狂気的な展開が徹頭徹尾連続していきます。
本作は弛緩と緊張。狂気と正気が交互に、らせん状に渦を巻くような構成となっており、まさにクトゥルフを題材とした、正気が削り取られていくような感覚を登場人物達と共に味わうことが出来ます。
登場人物の思考も独特(その上で非常に感情移入もしやすい)で、どこで突然正気と現実の境界を飛び越えるのか全く予測がつきません。
総じて、巨大なジェットコースターに乗せられたかの…続きを読む