狂気に侵された脳髄は、血反吐すら甘く感じさせる。

特筆すべきは圧倒的な落差と速度。
そしてそれを不自然に思わせない構成の妙でしょう。

見せたい武器(シーン)が無数にある中で、選りすぐりの殺傷力を持つ場面だけをひたすらぶつけられているような、狂気的な展開が徹頭徹尾連続していきます。

本作は弛緩と緊張。狂気と正気が交互に、らせん状に渦を巻くような構成となっており、まさにクトゥルフを題材とした、正気が削り取られていくような感覚を登場人物達と共に味わうことが出来ます。

登場人物の思考も独特(その上で非常に感情移入もしやすい)で、どこで突然正気と現実の境界を飛び越えるのか全く予測がつきません。

総じて、巨大なジェットコースターに乗せられたかのような読み心地の作品です。この感覚はぜひ一度多くの人に味わって頂きたい。

物語だけでなく、構成と文脈によっても絶妙な酩酊感が味わえる本作。お勧めです。

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