概要
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- ★★★ Excellent!!!幸せな記憶と変わらずそこにあるものと、そこからの巣立ち
戦後、開発者の元に引き取られた元軍用アンドロイドの、最後の一週間のお話。
戦のない日常を描いたSFであり、また王道のビルドゥングスロマンです。
高校生の少女、梓の成長を描いた物語。決して喜ばしいことばかりではない、むしろつらく苦しい現実が次々姿を現す日々の中、まるでとどめとばかりに確約された「ミリアム」との別れに向かって進んでゆく、その物語の力強さに打ちのめされました。
昔と変わらず美しいままのミリアム。壮絶な現実の只中にある梓にとって、それは安全な揺り籠のようなもので、であるならば彼女との別れはつまり、事実上の巣立ちであるように思えました。
あまりにもつらく、苦しく、険しい現実。…続きを読む - ★★★ Excellent!!!美しい思い出と、感傷のメモリー
わずか一万文字ながら、胸に迫るお話だった。見ようによってはあの幕切れは悲劇とも映るが、これは決まっていた結末で、梓ちゃんはそれを踏まえてミリアムと過ごしていた。
ミリアムはアンドロイドで、俗世の生活というものをしていないから、梓の学校や家庭のような醜さとは無縁だ。しかし戦場で働いたミリアムは、それらとは別種の醜さもまた見てきたのだろう。けれど、それはどっちがどうとか比べる話でもない。
激しい戦争を生き延びた旧時代のアンドロイドが、少女の心に美しく輝かしい思い出になって去るというのは、物語としてこれ以上ないハッピーエンドに思えて、私はどうしても戦場の彼女について想像をかきたてられた。
ミリアム…続きを読む - ★★★ Excellent!!!死を待つアンドロイドの家
ミリアムが作られてから止まるまでに起きた、長い長い物語の内の最後の数日間のお話。
感情を持っているアンドロイドなのに作中で見せる感情は穏やかな物ばかりで、一番強く見せた感情の怒りの時でさえ口調を荒げたり大声を出したりはしません。
きっと、彼女は人の一生と同じ時間を生きている内に人間と同じ様に自らの感情を制御する術と、激しい感情は『疲れる』という事を学んだのでしょう。
数値で感情が見れるアンドロイドですが、感情を制御出来るのならばその数値はただの飾りでしかありません。
彼女が周囲の人間をどう思っていたか。梓に何を残したかったのか。弓絵をどんな感情で見ていたのか。そして、彼女自身の死についてどう…続きを読む